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ねりま映像人インタビュー

第20回 加藤和夫さん 前編

第20回 加藤和夫さん 前編

2023.03.20

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※現在の社会状況を考慮しビデオ会議システムを使用して収録いたしました。通信環境の状況により、音声が一部お聞き苦しい箇所がございます。ご了承ください
練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化の関わりを紹介する「ねりま映像人インタビュー」。
今回と次回のゲストは、東映ビデオのプロデューサー・加藤和夫さんです。
加藤さんは1983年に東映ビデオに入社。実写、アニメを問わず、数々の映像作品をプロデュースされています。1989年には新たな映像文化「東映Vシネマ」の第1弾作品『クライムハンター 怒りの銃弾』をプロデュース。現在は常務取締役として、後進たちの映像制作を支えていらっしゃいます。
今回は練馬区や東映東京撮影所での作品制作を中心にお伺いします。

—— 練馬区の思い出や、印象的な場所などはありますか?

加藤:やはり東映東京撮影所【1】が一番大きいですね。Vシネマ【2】、その後の映画、それからテレビの作品でもほぼほぼ東映東京撮影所に関わっています。数限りなく通いましたし、いろいろな仕事をその中でやっています。
一般の方はわかりづらいかもしれませんが、撮影所には大きく言うと3つ機能があります。
一つは撮影の準備や、機材や必要な道具を置いたり、撮影に関する物事を回していく場所。我々はスタッフルームと呼んでいます。
もう一つは、皆さんご存知と思います、ステージ。大きい倉庫みたいな建物があって、その中にセットを組んで撮影をします。
セットは土木に近い形で、トンテンカンテンと建てなきゃいけないので、人件費も含めて、結構お金がかかる。
その代わり(借りた建物や部屋などと違い)自由に撮れるという、自由度の高さがあります。
ただこれは予算が高いので、僕のやってきた仕事でこのシステムを使ったことはあまりないです。
最後の一つが、皆さん意外と知らないかもしれない、仕上げとしての機能です。
撮った映像を切り出して編集をして、その後この映像に音をつけていくわけです。音楽や効果音、それから録った音を調整して聞きやすくするとか。この仕上げの作業でデジタル合成なども行います。私はこの仕上げに関する部分でよくお邪魔していました。
一時期は週何回か、仕上げや準備で大泉にいたことが結構多かったですね。

—— 2019年5月公開の映画『としまえん』【3】にも関わってらっしゃいます

加藤:この作品は、元々は東映ビデオ【4】で「お安い(低予算の)映画をやろうよ」っていう話をしていて、いろいろなところで打ち合わせをしていました。東映東京撮影所の現・所長の木次谷良助さん【5】と話をする中で、彼らも大きい作品ばかり受けるのではなく、小さい作品も受けて数を増やしたいという思いがあった。そのために第2制作部を作るので、そこに担当させてもらえないか?という話になったんです。それで2本、新生の東映東京撮影所第2制作部でやってもらうことになり、一つはBL(映画『花は咲くか』【6】)で、もう一つがこの映画『としまえん』でした。
撮影所で助監督をやっていた社員の高橋浩さん【7】が『としまえん』で監督するということも含めて、東映東京撮影所と東映ビデオで、マッチングして制作しました。
木次谷さんは、としまえんさん【8】や練馬区関係のいろいろな方とお知り合いで、「としまえんの中だけで物事をやってみる」って話に賛同していただけました。
としまえんさんには非常によくしていただきました。1ヶ所であれだけの「撮り物」(撮って絵になる対象物)があるのはもうレアケースで、ありがたいとしか言いようがなかったです。
練馬区役所さんにも色々な折衝のお手伝いをしていただいて、我々としては非常にありがたい、とても思い出に残っている作品です。

—— ありがとうございます。東京撮影所での加藤さんのお仕事のお話ですが、準備と仕上げが多かったということですね。

加藤:そうです。東映東京撮影所自体も、第1・第2制作部があって何度か制作をお願いしたことがあります。あとは『相棒』【9】だったりとか、『スーパー戦隊シリーズ』【10】『仮面ライダーシリーズ』【11】などを作っている東映テレビ・プロダクション(通称:テレビプロ)に制作をお願いすることもありました。
でも、どちらかというと、東映ビデオの作品を持っていって、撮影所で仕上げをすることが多かったです。
東映ビデオの子会社「セントラル・アーツ」【12】(TVドラマ『探偵物語』【13】『あぶない刑事』【14】 などを制作していた制作会社。社長は黒澤満さん【15】)で制作することがすごく多かったので。

—— セットを建てずに撮影所自体で撮影することもあったと伺いました。

加藤:これはどこもやっていることで、我々は「所内を飾る」って言い方をします。
例えば、ちょっとした飲み屋横丁の小路なんかを、所内に看板を置いたり、ぼんぼりを吊るしたりして作るんです。
夜間の撮影となると、光量が必要で当然照明をたかなきゃいけない。実際の飲み屋街にお邪魔してナイターで撮るとなると、ご迷惑をかけてしまうこともありますし、使用料が発生したり、撮影できる時間が限られたりする。だから所内でやるのが一番いいんです。

—— 2005年のTVドラマ『Sh15uya』(シブヤフィフティーン)【16】も第1話ではずいぶん所内を使ったと伺いました。

加藤:そうですね、ほぼ所内です(笑)。
渋谷の話なので、実際に行ってもいますが、現実の渋谷は皆さんがよくご存知のあたりがほぼ撮影禁止でほとんど撮れない。だから渋谷らしいところをバックにしてちょっと撮影して、角を曲がったら、もう撮影所に飾った小路に入る。みたいな感じでした。
『Sh15uya』って、「シブヤ」って言った瞬間に自分たちでハードルをめっちゃ上げてるワケです(笑)。
とはいえ第1話は、やっぱり一番派手にしなきゃいけないし、いろいろ説明しなきゃ視聴者がわからないから、そのための出し物もいっぱい出さないといけないというのもありました。
『Sh15uya』はサイバーな設定の美少女変身SFなんです。
それで当時、アメリカから帰って来たアクション監督の横山誠さん【17】に入ってもらい、当時非常に珍しかったワイヤーアクション【18】を取り入れたんです。
ただ、ワイヤーアクションのためには、高いところに滑車を吊らなければならず、これを撮影場の外でやろうとするとクレーン車を持って行かなきゃいけない。これはなかなか大変なので、撮影所内でやることが多かったですね。
あとロイター板(跳び箱の踏み切り板)みたいなもので、ガス圧で跳ね上げて人間を吹っ飛ばす装置があるんです。アホじゃないの?ってくらい飛ばせるんですが、そういうのもロケ先では使えないので、所内で撮影しました。
そういう目新しいものを出して、視聴者の興味を引きたかったので、第1話は特に撮影所が非常に多くというか、最初の渋谷を撮ったら後は撮影所って感じでしたね。

—— 第1話のアクションはすごく派手で、帰国した横山誠さんはアクション監督デビュー戦を見事に飾ったような印象です。

加藤:ワイヤーを引く人を、ワイヤーリガーっていうんです。滑車があって、てこの応用で人が宙を舞うんですけど、ワイヤーリガーの方たちがそのシステムを組むときに、物理の教科書を持ってくるんですよ。
「ここにやると1/4になって、ここに掛けるから1/8の力になるはず。そのかわりスピードがこうなる」なんて計算を、教科書を持ちながらやっているんですよ。 本当にあの当時は珍しいことだったので、大変興味深く、当時私もメイキングで撮っていました。
本当に凄かったですよ。夕方過ぎてからのナイター撮影でしたが、夕方4時過ぎぐらいから段取りを始めたら、所内からどんどん人が集まるんです。JACさん【19】とかがものすごい勢いで見に来て、ギャラリーがめちゃくちゃ多くて(笑)。メイキングにもチラっと映っていると思います。大変面白かったですね。

—— 『Sh15uya』のプロデューサーとして、今、振り返ってどのように感じられますか?

加藤:めちゃくちゃ面白かったですよ(笑)。
ド深夜で、しかも首都圏だけしかやってないっていう代物でしたけど、TVでできることの「極み」みたいなところをやれたかなと思います。夜中の2時の番組なのに、「お金も時間も掛かるフル3Dの化け物が出てきて襲われるっていうのって、おかしくない?」って(笑)。
変身美少女役の新垣結衣さん【20】が、ほぼデビューに近いような形で一緒にやらせていただけましたし、面白かったですね。
日本の今の特撮が、そこからどこまで進化しているのかというと、見せ方自体は進化していると思うんですけど、特撮合成だったりはそこまで進化してないじゃない?と思ったりもするので、そこからどんどん前に進んで世界をリードできるぐらいのところまで行かなきゃな。と思います。

—— 横山アクション監督とは、劇場版『仮面ライダー THE FIRST』【21】でもご一緒されています。物語前半で1号ライダーがビルの上から落ちて着地するアクションが印象的でした。

加藤:いろいろなカットが重なっていますが、着地のカットそのものは屋外で撮りました。
テストのときに、さっきの物理の教科書が出てくるんですよ。本当に生きる死ぬの問題なので、飛び降りる人間が自分で全部計算して、「絶対大丈夫」というところまで納得して。
ワイヤーの先にブレーキがついているんです。それで、ある距離までくると、ワイヤーに対してブレーキがかかる。ただワイヤーは伸びるので、どこまで引っ張って上げるかによって変わってしまう。事前に計算はしていますが、一発勝負になってしまうんです。
思ったよりもワイヤーが伸びたので、かなり激しくかかとを打っていたはずなんですけど、横山さんのチームは痛いの大好きなので(笑)。
でもセーフティを取りすぎちゃうと、地上にバウンドしない状態で空中でブラーンって止まってしまう。だから「痛い目に合わなきゃしょうがない」って理屈になって。あれはたまげました(笑)。

—— 作品全体として『仮面ライダー THE FIRST』と続編の『仮面ライダー THE NEXT』【22】の2本を、プロデューサーとしてどのように振り返りますか

加藤:もう一度、石ノ森章太郎先生【23】の原作の『仮面ライダー』【24】に戻ろうっていうことをやったんですね。
仮面ライダーっていろんな要素がくっついていって、バイクに乗らない仮面ドライバーもいたり、どんどん変わっていく。それも大変いいことだと思うんです。 でも、石ノ森先生が描いたものにもう1回戻ろうよというのは、やってみたら面白くて。
石ノ森先生の仮面ライダーは、マスクを装着して仮面ライダーになる。そのパワーは人体改造によって得られたものであり、マスクやスーツが強化するものではない。そしてそれによって生まれるファンタジーのアクションを、当時日本で一番新しい方法でお見せできたのは、非常に楽しかったし、非常に名誉なことだったと思います。

明日の勇気につながる2作加藤和夫さんのおススメ!

『狂い咲きサンダーロード』
(1980年/日本/監督:石井聰亙/脚本:石井聰亙、平柳益実、秋田光彦/出演:山田辰夫、中島陽典、南条弘二、小林稔侍 ほか)
幻の街サンダーロード。権力に日和った暴走族に反旗を翻し、暴走を続ける仁。しかし、これを心よく思わないエルボー連合に報復され、手足を切断されてしまう。だが、復讐に燃える仁は闇マーケットで得た仲間の協力を得て戦闘マシーンと化し、エルボー連合との最終決戦に挑む!

加藤:1本ということでしたが、僕がなぜこの商売を目指したかっていう大事な映画も1本あったんで、2本紹介させていただきます。
この『狂い咲きサンダーロード』を観て、映画を商売にしたいなと思ったんです。
こんな狂ったことができるんだったら、映画でご飯が食べられるようになりたいと。
本当にかっこいい映画で、音楽もめちゃくちゃかっこいいんですよ。
DVDまでにはなってるはずなんで、観られるツテがあれば、ぜひ観ていただきたいです。

『デルタ・フォース』
(1986年/アメリカ・イスラエル/監督:メナヘム・ゴーラン/脚本:ジェームス・ブルーナー、メナハム・ゴーラン/出演:チャック・ノリス、リー・マーヴィン、ロバート・ヴォーン ほか)
カイロ発ニューヨーク行きの旅客機ATW282便がアラブ人テロリストにハイジャックされた。アメリカ陸軍特殊部隊デルタフォースのニック・アレクサンダー大佐は、退役していたスコット・マッコイ少佐を召集。困難な救出作戦に挑む!

加藤:あなたの映画ベスト1はなんですか?とよく聞かれますが、それは愚問だと思っていまして。ベスト1は20本ぐらいあるんです(笑)。
でも、新人たちに「こういうのを観ろ」という時などに出すのが『デルタ・フォース』です。
アメリカの一時期のとんでもない大B級映画の中の一つです。お話もよくできているんですけど、全体に無駄がないんです。アクション映画として無駄がないというのは、実はすごく難しいんです。
おすすめできる作品はいろいろあるんですけど、よっぽどのことがない限り観る気にならないような作品を出しておいた方が、皆さんの一つの知恵になるのかしらと思いました(笑)。
この2本をぜひご覧なっていただきたいですね。
音声版では、更にいろいろな話が出てきます。
是非お聴きください。

プロフィール

加藤和夫(かとう かずお)
東映ビデオのプロデューサー・常務取締役。
1983年に東映ビデオに入社以降、実写、アニメを問わず、数々の映像作品に携わる。
1989年には「東映Vシネマ」の第1弾作品『クライムハンター 怒りの銃弾』をプロデュース。以後、プロデューサーとして実写映画『ブギーポップは笑わない』(00)、『仮面ライダー THE FIRST』(05)などに参加。近作にエグゼクティブプロデューサーとして『スーパー戦闘 純烈ジャー』(21)、『ツユクサ』(22)など。
現在は常務取締役として、後進たちの映像制作を支えている。

登場する作品名・人物名等の解説

【1】東映東京撮影所
東京都練馬区東大泉に所在する、東映株式会社の映画スタジオ。
【2】Vシネマ
東映Vシネマのこと。東映ビデオが1989年より制作・発売を開始した、劇場公開を前提としないビデオレンタル専用映画。
1989年3月に発売された世良公則主演『クライムハンター 怒りの銃弾』が、東映Vシネマの第1弾作品。(ビデオオリジナル作品は、他社に数本の先行作品がある)
『クライムハンター 怒りの銃弾』、同年8月に発売された仲村トオル主演『狙撃 THE SHOOTIST』、1990年に発売された哀川翔主演『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』が大ヒットとなり、続々と制作されることになる。
当時の邦画は低迷していた時期だったが、長谷部安春氏や高橋伴明氏といったベテラン監督や、清水崇氏や三池崇史氏をはじめとした新人監督、そして哀川翔氏や竹内力氏など多くの俳優たちにとっての活躍の場となった。
1990年代には同業他社も多数参入し、レンタルビデオ店を席捲。「Vシネ」として一大ジャンルを築いた。
【3】映画『としまえん』
2019年に公開された映画。練馬区に実在した遊園地「としまえん」(2020年閉園)を舞台に、インターネットで噂になっていた都市伝説を興味本位で試した女子大学生たちが恐ろしい呪いに巻き込まれるサスペンスホラー。
としまえん全面協力の下、撮影が行われた。
監督・脚本:高橋浩/出演:北原里英、小島藤子、浅川梨奈、松田るか、さいとうなり、小宮有紗 ほか
【4】東映ビデオ
劇場用映画をはじめ、TVドラマ、アニメ、Vシネマなどのビデオ・DVDソフトの製作・販売活動を行う、東映出資の子会社。近年は映像作品の製作や配給のほか、エンタテインメントに関する事業を幅広く展開している。
主な制作作品:【Vシネマ】『クライムハンター』シリーズ(89-90)『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ〜』(90)、【劇場映画】『仮面ライダー THE FIRST』(05)『HK/変態仮面』(13)『百円の恋』(14)『ツユクサ』(22)、【TVドラマ】『探偵物語』(79-80)、『Sh15uya』(05)など。
【5】木次谷良助(きじや りょうすけ)さん
東映東京撮影所長。1966年生まれ。フリーの制作助手として映画に携わる。最初に参加した映画は、1987年降旗康男監督作の『別れぬ理由』。2005年に社員として東映に入社、2012年に東映東京撮影所の所長に就任した。
【6】映画『花は咲くか』
2018年公開。原作は、日高ショーコ氏によるボーイズラブ(BL)漫画。 広告代理店に勤める37歳のサラリーマン・桜井和明は、CM撮影で赴いた古く美しい日本家屋で一心に花の絵を描く19歳の美大生・水川蓉一と出逢う。蓉一は他人に興味がなく親しい友人すらいないが、桜井にだけは心を開くようになる。二人の気持ちは次第に絡み合ってゆくのだが…
原作:日高ショーコ/監督:谷本佳織/脚本:高橋ナツコ/出演:渡邉剣、天野浩成、塩野瑛久、小原唯和、水石亜飛夢、本宮泰風
【7】高橋浩(たかはし ひろし)さん
映画監督。東映で『鉄道員(ぽっぽや)』(99)『半落ち』(04)『仮面ライダー THE NEXT』(07)などの助監督を務めたのち、映画『としまえん』で長編映画監督デビューを果たした。なお、『としまえん』ではオリジナル脚本も担当している。
【8】としまえん
練馬区向山で、1926年より戦時中の一時期を除き94年間営業していた遊園地。東京都からの防災公園化の都市計画に伴う閉園要請を受け、2020年8月に閉園した。その跡地には、映画『ハリー・ポッター』シリーズの映画製作の裏側を体験できる、ウォークスルー型の施設「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ ハリー・ポッター」が2023年6月16日に開業予定。
【9】『相棒』
2000年から放送されている刑事ドラマシリーズ。主演は水谷豊。警視庁「特命係」に所属する杉下右京と、その「相棒」の活躍を描く。2000年から2001年にかけて単発ドラマとして放送、2002年10月から連続TVドラマとして放送。また、これまでに劇場版4作とスピンオフ映画2作が公開されている。
【10】『スーパー戦隊』シリーズ
東映制作の特撮TVドラマシリーズ。1975~77年に放送された『秘密戦隊ゴレンジャー』から始まり、現在まで途切れることなく放送が続いている。2023年3月放送開始の『王様戦隊キングオージャー』で47作となる。
【11『仮面ライダー』シリーズ
東映制作の特撮TVドラマシリーズ。 第1作目は、1971年4月放送開始。また、2000年放送の『仮面ライダー クウガ』以降、毎年新シリーズが放送され続けている。
【12】セントラル・アーツ
映画・テレビ制作プロダクション。東映グループ構成企業の一社で、前述の黒澤満氏が代表取締役を務めた。東映セントラルフィルムの企画・製作部門が、1980年代後半にセントラル・アーツとなった。代表作に、映画『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ(85-88)、TVドラマ・映画『あぶない刑事』シリーズ(86-16)、映画『オルゴール』(89)、Vシネマ『狙撃』シリーズ(89-94)、『カルロス』(91)、映画『ブギーポップは笑わない』(00)、映画『北のカナリアたち』(12)など。
【13】『探偵物語』
1979~80年に全27話が放送されたTVドラマ。私立探偵・工藤俊作が、様々な依頼を解決するため活躍する様を描く。
主演の松田優作氏のアドリブや、内容がエスカレートしていく次回予告などは、現在でも語り草となっている。
監督:村川透、西村潔、澤田幸弘、長谷部安春 ほか/出演:松田優作、成田三樹夫、山西道広、竹田かほり、ナンシー・チェニー ほか
【14】『あぶない刑事』
1986~87年に全51話が放送されたTVドラマ。再開発を控えた港町・横浜を舞台に、神奈川県警港署の刑事・タカとユージの活躍を描く。
当時の若年層を中心に社会現象的なヒットとなり、TVシリーズの続編やスペシャル、劇場映画も7作が製作されるなど、30年に渡るシリーズ展開が行われた。
監督:長谷部安春、手銭弘喜、村川透、西村潔、一倉治雄 ほか/出演:舘ひろし、柴田恭兵、浅野温子、仲村トオル、木の実ナナ、中条静夫 ほか
【15】黒澤満(くろさわ みつる)さん
映画プロデューサー。東映ビデオ代表取締役副社長、セントラル・アーツ代表取締役を務めた。
元々は日活の出身で、調布のにっかつ撮影所(現・日活撮影所)の所長として辣腕をふるったが、1977年に退職。当時の東映社長・岡田茂氏の誘いを受け、岡田氏が設立した東映セントラルフィルムの製作部門にプロデューサーとして就任した。
1978年に松田優作氏を主演とした映画『最も危険な遊戯』を東映セントラルフィルムの旗揚げ第一作として制作。好評を得て『遊戯』シリーズとして全3作を製作した。その後も、TVドラマ『探偵物語』(79-80)、映画『野獣死すべし』(80)などの松田優作主演作品を制作。80年代半ばからは映画『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズや、TVドラマ・映画『あぶない刑事』シリーズなどを手がけ、「東映Vシネマ」の作品などを多数制作した。2007年には第5回文化庁映画賞映画功労表彰部門を受賞している。2018年、85歳で逝去。
【16】『Sh15uya』(シブヤフィフティーン)
2005年に全12話が放送された特撮ドラマ。渋谷のようで渋谷ではない「バーチャル世界《シブヤ》」を舞台に、15歳の少年少女らの「戦い」を描いた青春アクションSF作品。
後述の新垣結衣さんは、物語のキーパーソンとなる少女・エマを演じている。
総監督:田﨑竜太/監督:田﨑竜太、鈴村展弘/アクション監督:横山誠/脚本:米村正二/出演:悠城早矢、新垣結衣、芳賀優里亜、松山鷹志 ほか
【17】横山誠(よこやま まこと)さん
アクション監督・監督・スタントマン・演出家。スタントチーム「AAC STUNTS」代表取締役社長。 1995年に『パワーレンジャー』出演の為に渡米。セカンドユニット監督も担当するようになる。その後、アクション監督や本編の監督として、約8年間で『パワーレンジャー』シリーズ約400本に関わった。
帰国後に『Sh15uya』や『仮面ライダー THE FIRST』などの作品で、アクション監督を務める。
2005年にスタートした特撮ドラマ『牙狼〈GARO〉』シリーズでは、アクション監督だけでなく、監督も務めている。
2021年に発足した、アクション製作に関わるプレイヤー、クリエイターの為の支援団体「JAPAN ACTION GUILD」(ジャパンアクションギルド/JAG)の創設メンバーでもある。
【18】ワイヤーアクション
俳優やスタントマンにハーネス(安全帯)を装着し、ワイヤーロープに吊られた状態で演技する、特殊な撮影システムの一つ。滑車を用い、引く側、滑車、吊られる対象がそれぞれ力点、支点、作用点にあたる「てこの原理」を利用してアクションを行う。
1954年にブロードウェイのミュージカル『ピーターパン』で初めて使用され、その後、香港でカンフーアクション映画を中心に発展。1999年のアメリカ映画『マトリックス』に導入されたことで注目され、世界各国で盛んに使われるようになった。
また、カメラマンにハーネスを装着し、空中を移動しながら撮影するケースもある。
【19】JAC
ジャパンアクションクラブ(現・ジャパンアクションエンタープライズ/JAE)の通称。アクション俳優・スタントマンが主に所属する芸能事務所で、俳優の育成・マネージメントのほか、映像作品や演劇、イベントなどの企画・構成・演出も手がけている。
俳優・千葉真一氏が、世界に通用するアクションスター・スタントマンの育成・輩出を目指して1970年に創設、東映で千葉氏が出演する作品の格闘・スタントシーンには欠かせない存在として認知されるようになる。俳優では、志穂美悦子氏、真田広之氏、大葉健二氏、黒崎輝氏、渡洋史氏らを輩出している。
【20】新垣結衣(あらがき ゆい)さん
女優、歌手、ファッションモデル。2001年にファッション誌「ニコラ」でモデルとしてデビュー。2004年ごろからグラビアや女優業に進出し、TVCMなどへ出演する。2015年に『Sh15uya』でドラマデビュー、物語のキーパーソンとなる少女・エマを演じた。2006年には『トゥルーラブ』でドラマ初主演。『恋するマドリ』(07)で映画初主演を果たした。その他の代表作に、TVドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(08-18)、『リーガル・ハイ』(12)、『空飛ぶ広報室』(13)、『逃げるは恥だが役に立つ』(20)、『鎌倉殿の13人』(22)など。
【21】『仮面ライダー THE FIRST』
2005年に公開された映画。「仮面ライダー」の原点・本郷猛=仮面ライダー1号と一文字隼人=仮面ライダー2号の物語を、最新の表現と技術で再映像化。原作者・石ノ森章太郎氏の漫画版「仮面ライダー」が企画の基になっており、漫画版に由来した設定が盛り込まれた。
原作:石ノ森章太郎/監督:長石多可男/アクション監督:横山誠/脚本:井上敏樹/出演:黄川田将也、高野八誠、小嶺麗奈、ウエンツ瑛士、小林涼子 ほか
【22】『仮面ライダー THE NEXT』
2007年に公開された映画で、『仮面ライダー THE FIRST』の続編。本郷猛=仮面ライダー1号と一文字隼人=仮面ライダー2号のほかに、風見志郎=仮面ライダーV3が敵として登場する。「怪奇性」が強調され、ホラーやバイオレンス描写が多く盛り込まれた「ホラーアクション」としての色が濃く、仮面ライダー映画としては初のPG-12指定作品となっている。
原作:石ノ森章太郎/監督:田﨑竜太/アクション監督:横山誠/脚本:井上敏樹/出演:黄川田将也、高野八誠、加藤和樹、石田未来、森絵梨佳 ほか
【23】石ノ森章太郎(いしのもり しょうたろう)さん
萬画(まんが)家。SFマンガから学習マンガまで幅広い分野で作品を量産し、〈漫画の王様〉、〈漫画の帝王〉と評された。1985年に画業30年を機に「石森章太郎」から「石ノ森章太郎」に改名。1989年には、多様なマンガ表現を追求し、無限の可能性を表す言葉〈萬画〉を提唱した。代表作は「サイボーグ009」、「仮面ライダー」、「さるとびエッちゃん」、「人造人間キカイダー」、「HOTEL」など。『仮面ライダー』シリーズを始め、特撮作品の原作者としても活躍した。1998年没。
【24】『仮面ライダー』
1971年に週刊ぼくらマガジン・週刊少年マガジンに連載された、石ノ森章太郎氏の漫画。特撮TVドラマ『仮面ライダー』の企画設定を元に、TV版とは異なる設定やストーリー、改造人間の苦悩や社会風刺など、TV版とは違った石ノ森テイストにあふれた作品となっている。
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