映像∞文化のまち ねりま

ねりま映像人インタビュー

第26回 高野水登さん 後編延長戦

第26回 高野水登さん 後編延長戦

2023.09.08

こちらのコンテンツは、是非音声版でお楽しみください

※ビデオ会議システムを使用して収録いたしました。通信環境の状況により、音声が一部お聞き苦しい箇所がございます。ご了承ください
練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化の関わりを紹介する「ねりま映像人インタビュー」のダイジェストテキストです。
今回のゲストも、脚本家の高野水登さん。
前回に引き続き、現在放送中の『王様戦隊キングオージャー』について伺います。
高野さんの熱いトークを、是非音声版でお楽しみください。

—— 『キングオージャー』【1】の脚本が映像化されて、「自分のイメージとは違ったけどすごく良い」みたいなことはありますか?

高野:一番は、やっぱり第1話【2】の“沈黙の30秒”ですね。
「世界の敵になったのだ」と言われたギラ【3】が、「望むところだ!」と応えるまでに沈黙があるんです。
これは台本には書いてなくて、僕の中ではポンポンと進むつもりでした。
それが30秒ぐらい使っている。正味23分の番組の30秒だから、1/46を沈黙に使うのは狂気の沙汰なんです。
だけど、あの間があるからこそギラの気持ちに入れるし、一気に好きになれる。ネットでも「あそこがすごい!」と話題になったのもあり、すごく嬉しかったですね。
あとはやはりアクション。これは本当にスーツアクターさんとアクション監督がすごいと思いました。キャラクターに命が吹き込まれる感じがあります。
例えば、ヤンマ【4】がヤンキー座りで肩に剣を担いでいるとか、カグラギ【5】が戦闘中も胡坐をかくとか、1人1人の戦い方がキャラクターを表している。セリフだけではなく、キャラクターのビジュアルだけでもなく、あの立ち振る舞いが、確実にキャラクターを補強しています。
「こういう戦い方をする人だから、こういうやり取りになるな」とか、自分の中でキャラクターの解像度が上がるんですよ。これはすごいと思いました。

—— シュゴッド【6】に感情があり、シュゴッド同士にも関係性があり、少し恋愛感情がある。みたいな設定は、高野さんの発案なんでしょうか。

高野:作っているとストーリーがどんどん縦軸で進むし、(話が)真面目だから、ちょっと馬鹿馬鹿しいことをやりたいと思って。だからこっちでラブコメみたいなことをしようと考えたんです(笑)。
ただ必然のところもあって、この子たちは今まで何故一緒にいなかったのか?と考えると、何かしらの意思がないと、今まで一緒にいなかった説明がつかない。
各国のシュゴッド、例えばクワガタやカマキリなどは、その国の王様と一緒にいるけれど、他のシュゴットはそれぞれに生活があるんじゃないかと考えました。そうなるとプライベートの話になるから、恋愛関係はどうだ?と。それで、ちょっとかわいらしい三角関係みたいになりました(笑)。
あとは何よりも、シュゴッドをただの兵器や道具にしたくなかった。だからといって友達というのもちょっと違う。それぞれに意思があって、それぞれに生活もあって、それが一つに重なるときもある。人間に都合のいい存在ではないけれど、手を貸してくれることもあるよと。
これは「困難があったときに結束する」という『王様戦隊キングオージャー』自体のテーマでもあるんです。

—— 「五国異事案対策用略救命部」【7】で「王様戦隊」というのは、最初から考えていたのですか?

高野10話【8】で「我ら王様戦隊!降臨せよ、キングオージャー!」というセリフがあるのですが、あそこで「どこかで“戦隊”という言葉は使わなきゃいけない。でも、“王様”で“戦隊”とはどういうことなんだろう?」と、“王様戦隊”と、向き合うことになったんです。
10話では、かつての伝承で、「矛盾を超える、王様が手を取り合ってありえない事をなす」ことの象徴として“王様戦隊”という言葉が古代の文献にあった、ということにしたんです。だから、19話【9】での名乗りも、最初はそこからとって“王様戦隊”と書いたんですよ。でも、プロデューサーの大森敬仁さん【10】に「これ、意味があった方が良いです。その方がカッコイイじゃないですか」と言われて、僕も好きだから考えたんです(笑)。
「“戦隊”と言いつつ、戦う部隊にはしたくない」というのは、最初からみんなで話していて、“戦略救命部隊”、あくまでも“救命部隊”だというのは決めていました。
でも、“五王国”はいいけど、“様(さま)”はどうするんだよ?と。このことだけを、1日使って調べました。
その時に、古語で異様(いよう)なことを「異様(ことざま)」と書かれているのを見つけたんです。「これしかない!」と、天に感謝しましたね(笑)。
それで、異常事態みたいな意味で“異様事案(ことさまじあん)”と名付けたんです。
19話でみんなが格好良くキメてくれて、本当によかった。そのあとの戦闘シーンもめちゃくちゃ凄くて、加藤弘之監督【11】は天才ですね。

—— リタ【12】が頼る“もっふん【13】”は大事なキャラクターですが、どんなところから発想されたのでしょうか?

高野:リタは(立場的に)本音を表に出さないキャラクターなので、誰にも言えないことは、ぬいぐるみの“もっふん”と話すことにしたんです。リタの苦しい胸の内を、あのもふもふが受け止めてくれるんじゃないかなと。
実は僕はぬいぐるみが大好きで、「自分がデザインしたぬいぐるみを手に入れる」という野望を心に秘めていたんです。それで、プロデューサーから「もっふんのイメージって、何かありますか?」と聞かれたので、ここぞとばかりに自分がずっと考えていたアイデアをその場で描きました。気が付いたらバンダイさんに綺麗にしていただいて、商品化もされるというとんでもないことに(笑)。

—— ご自身がこの作品が大好きとうかがいました。自分がこの作品が大好きなことが、作品にフィードバックされるようなところはありますか?

高野:観ている人みんなに楽しんでほしいと思って書いています。それは、自分が面白いと思うものじゃないと駄目だ、飽きっぽい自分が飽きないものにしたい、自分が毎週観たいと思うものを作りたい、という気持ちがでもあるんです。
この作品は、もちろん脚本も大切なセクションではありますが、いろんな人の技術と才能が結集して出来上がっています。だから、完成したものを観たときにすごく新鮮なんです。
例えばアクションシーンやロボットのシーンなんかは、僕もどうなるかわからないので、より一層新鮮な気持ちで観られるんです。
純粋に1人のファンとして楽しい。だからこそ、もっと観たいものが出てくるという循環が生まれています。
自分がファンとして観ていますから、「こういうのが見たい」、「新しいことをしてほしい」、「びっくりしたい」んです。
僕が脚本を書いていることが最大の欠点ですね(笑)。記憶を消して、1話から観たいです。

スーパー戦隊シリーズ【14】は47作やっている伝統的なシリーズだから、ある意味ルーティン化しているんじゃないかと思っていたんです。でも、初期の打ち合わせで僕が衝撃を受けたのは、「新しいものをやろう!」という気持ちが溢れていることでした。
ある打ち合わせで、大人の事情の絡みで話が停滞した瞬間があり、そのときに僕が「こうしたら丸く収まるんじゃないですかね」みたいなこと言ったんです。そうしたら、隣にいた上堀内佳寿也監督【15】に、「いや、今はどうやったら面白くなるかだけを考えているんです」と言われて。その熱意に感動しました。
そんな気持ちを持っている人たちの集団ですから常に刺激的ですし、それが作品からもにじみ出るんですよ。本当に『キングオージャー』大好きです。

—— ファンの方に最後メッセージをいただけますでしょうか?

高野:今回、観てくれている人たちが温かくて。作品を理解してもらえた上に、好意的に楽しいとか面白いと言ってくれることは、なかなかないんです。
『キングオージャー』を、いろんな人から愛してもらっているという感覚がすごくあります。
嬉しいからこそ、そういう方々に裏切られた気持ちになって欲しくないし、僕自身がファンの代表として「『キングオージャー』に裏切られてなるものか!」と思っています。
最後まで楽しんでもらえるような仕掛けは、今の段階から用意しているので、信じて楽しんでついてきていただけたら嬉しいです。
これからもぜひよろしくお願いします。
今日は本当にいろいろ話せて楽しかったです。ありがとうございました。

本テキストは音声版のダイジェストです。
是非音声版でお楽しみください。

プロフィール

高野水登(たかの みなと)
脚本家。高校から劇団を主宰して演劇に関わり、その後、練馬区江古田にある日本大学芸術学部演劇学科劇作家コース(現・舞台構想コース劇作専攻)に進学。卒業後、映画『3D彼女 リアルガール』や『賭ケグルイ』、『映像研には手を出すな!』などのドラマ作品・映画作品の脚本を手掛ける。2022年には日本テレビ系日曜ドラマ『真犯人フラグ』の全話脚本を担当。
現在放送中の「スーパー戦隊」シリーズ第47作品目となる『王様戦隊キングオージャー』の脚本を担当している。

ダイジェストテキストに登場する作品名・人物名等の解説

【1】『王様戦隊キングオージャー』
2023年3月より放送中の東映制作の特撮アクションドラマ。「スーパー戦隊」シリーズ第47作品目。5つの国の「王」たちが力をあわせて戦う「王様戦隊キングオージャー」の活躍を描く。 高野水登氏は全話の脚本を執筆している(26話放送時点)。 原作:八手三郎/監督:上堀内佳寿也、山口恭平、加藤弘之、茶谷和行/脚本:高野水登/出演:酒井大成、渡辺碧斗、村上愛花、平川結月、佳久創 ほか
【2】『王様戦隊キングオージャー』第1話
「我は王なり」(監督:上堀内佳寿也)
【3】ギラ
守護神が宿る最強国「シュゴッダム」の児童養護園で育った純粋で心優しい青年。国王ラクレス・ハスティーの「国民を犠牲にしてでもチキュー統一を優先する」という目的を知り、反旗を翻した。後にラクレスの実弟であることが判明。ラクレスとの対決に勝利し、地帝国バグナラクの脅威からチキューを守り抜き、晴れてシュゴッダムの王となった。
王鎧武装でクワガタオージャーに変身する。モチーフは「ギラファノコギリクワガタ」。
【4】ヤンマ
テクノロジーの国「ンコソパ」の国王。スラム街で生まれ、パソコンひとつで国王に上り詰めた。ヤンキー精神で突っ走っる彼を「総長」と慕う者も多い。凄腕のエンジニアでもあり、王様戦隊の装備はすべてヤンマによって開発されている。
王鎧武装でトンボオージャーに変身する。モチーフは「オニヤンマ」。
【5】カグラギ・ディボウスキ
農業の国「トウフ」の殿様。温和で人たらしな性格だが、国を守るためなら汚い手を使うことをいとわず、平気でウソもつく。自分の得になるように物事を進める人並外れた交渉テクニックを持つ。
王鎧武装でハチオージャーに変身する。モチーフは「カブラハバチ」。
【6】シュゴッド
王様戦隊と共に戦う虫型の機械生命体。2000年前からチキューと人類を守り続ける伝説の守護神。ゴッドクワガタ、ゴッドトンボ、ゴッドカマキリ、ゴッドパピヨン、ゴッドハチ、ゴッドクモ×2、ゴッドテントウ×2、ゴッドアントの10体が合体することで、巨大王者ロボ・キングオージャーに変形する。
【7】「五王国異様事案対策用戦略救命部隊」
国境や利害を排し、一丸となって敵に対抗するため、五王国の王様たちが結成した組織。通称「王様戦隊キングオージャー」。
【8】『王様戦隊キングオージャー』第10話
「伝説の守護神」(監督:加藤弘之)
【9】『王様戦隊キングオージャー』第19話
「王様戦隊キングオージャー」(監督:加藤弘之)
【10】大森敬仁(おおもり たかひと)さん
東映所属のプロデューサー。2005年の『仮面ライダー響鬼』から、東映特撮TVドラマシリーズに関わるようになる。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13-14)で初めてチーフプロデューサーを務める。『仮面ライダーエグゼイド』(16-17)、『仮面ライダーゼロワン』(19-20)でもチーフプロデューサーを担当。『王様戦隊キングオージャー』で、10年振りに「スーパー戦隊シリーズ」に復帰した。
【11】加藤弘之(かとう ひろゆき)さん
監督・演出家。『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(93)より助監督として特撮番組に参加、『燃えろ!!ロボコン』(99-00)第37話「モモコ史上最大の危機」で監督デビュー。2000年から「スーパー戦隊シリーズ」に移り、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07-08)と『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08-09)にて助監督兼任でそれぞれの本編2本を監督。『侍戦隊シンケンジャー』(09-10)中盤よりローテーション監督を務める。以降、「スーパー戦隊シリーズ」の監督として活躍している。
【12】リタ・カニスカ
氷雪の国「ゴッカン」の国王。中立を正義と考える国際裁判長を兼任する。感情を表に出さず保守的で慎重なため、周囲からは堅物に見られるが…。 王鎧武装でパピヨンオージャーに変身する。モチーフは「ルリタテハ」。
【13】もっふん
チキューで放送されている人気アニメ「もっふんといっしょ」のキャラクター。モチーフはイエティ。リタの大のお気に入りで、様々なサイズのぬいぐるみや関連グッズを収集しており、孤独な彼女の心の支えになっている。
【14】「スーパー戦隊シリーズ」
東映制作の特撮TVドラマシリーズ。1975~77年に放送された『秘密戦隊ゴレンジャー』から始まり、現在まで途切れることなく放送が続いている。2023年3月より放送を開始した『王様戦隊キングオージャー』で47作となる。
【15】上堀内佳寿也(かみほりうち かずや)さん
監督・演出家。『仮面ライダーキバ』(08-09)より仮面ライダーシリーズに助監督として参加。『仮面ライダーエグゼイド』(16-17)第31話で監督デビュー。『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』(17)で映画初監督も務めた。2019年に『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19-20)で「スーパー戦隊シリーズ」に初参加し、パイロット監督も担当した。『王様戦隊キングオージャー』ではパイロット監督を担当。2023年7月公開の『映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』の監督も務めている。
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