—— 福さんご自身も練馬と関わりがあるそうですね
鈴木:そうなんです。僕の祖母の家があります。なので、練馬にはなじみ深いです。としまえん【1】や映画館にもよく行っていました。トイザらスに行くのも楽しかったし、親戚が集まるときは、シャトレーゼでケーキやアイスを買ったりとか(笑)。
—— 区内にお気に入りの場所はありますか?
鈴木:練馬だと、大泉の東映東京撮影所【2】がすごく好きですね。元々はとしまえんが好きだったので、なくなっちゃって寂しいです。でも、新しくできる『ハリー・ポッター』のスタジオツアー【3】は楽しみです。
—— 撮影前に、石ノ森章太郎先生のお墓参りに行かれたそうですね
鈴木:絵がいっぱい掘ってある石ノ森先生のお墓には、『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』【4】の台本を持って家族と一緒に行きました。
「一生懸命演じさせていただきます」と、しっかり伝えました。
—— 石ノ森先生を演じるにあたり、大切にしたところは?
鈴木:最後は石ノ森先生だとわかるので、石ノ森先生として演じることができたのですが、物語の前半は漫画家を志す少年なので難しかったですね。とくに映画の尺が短い(75分)こともあり、心の移り変わりをどう表現するのかが難しかったです。
後半は1人の漫画家として、藤岡弘、さん【5】とのシーンでは親子に見えるようにと意識しましたし、楽しみながら、考えながら、演じました。
—— 演じていく中で感じる、石ノ森章太郎像みたいなものはありましたか?
鈴木:お姉ちゃんの存在がすごく大きかったんだと思います。そのお姉ちゃんを亡くした悲しみの中で漫画を描いていたのは、自分ができる、お姉ちゃんが喜んでくれることをしていたのだと思いました。
—— 『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』の原作でもある、漫画『青いマン華(マンガ)鏡』【6】、『トキワ荘1961』【7】も読まれたそうですね
鈴木:『青いマン華(マンガ)鏡』は、お姉ちゃんとのエピソードが描かれていたので、お姉ちゃんとの関係性だったり、漫画を描くと決めるシーンなどの参考になりました。
実際のお話しとは違いますが、『スーパーヒーロー戦記』の中でも、結果的にお姉ちゃんとの別れを経験するわけです。
アスモデウスに自分の一番幸せな世界に連れていかれる。そこはお姉ちゃんと自分だけの世界。でも漫画を描かなくてはいけない。そこでお姉ちゃんと別れていく。その、お姉ちゃんが消えてゆく短いシーンのなかで、表情はハッキリとは映りませんけど僕なりに別れを演じさせていただきました。
『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は、『仮面ライダー』【8】50周年、『スーパー戦隊』【9】45作品の記念映画ということもあって、両作品の凄さもですが、それを生み出した石ノ森章太郎先生の素晴らしさを、あらためて皆さんに感じてもらえる作品です。そして、石ノ森先生を文字面でしか知らない世代の子たちにも、「石ノ森先生がいたからこそ、『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』を観ることができているんだよ」ということを伝えてくれる映画なのかなと思います。
—— 田﨑竜太監督から、「鈴木福さんへ」ということでメッセージをいただいておりますので、ここでご紹介させていただきます
記念作品で原作者の役を担当していただきありがとうございました。
福くんの面差しと、若い頃の石ノ森章太郎さんの写真がよく似ていたのは一つの運命だったと思っております。
きっとこんな少年だったのではないかな? を体現していただいて、本当に嬉しかった。
実際にお会いしたことはないけどタサキの中の石ノ森章太郎先生は福くんの演じてくれた彼になりました。
ヒーローを生み出す苦悩を、真正面から表現していただきました。
それは物語を、エンターティンメントを作り出す苦しみであり、程度の差こそあれ、我々も日々直面している苦しみです。
それを超えた時に物語の「親」になれるのだと思います。
福くんが今後、どんな物語を俳優という立場で紡いでいくのかとても楽しみにしています。
またお仕事をご一緒できることを心から祈っています。
たさきりゅうた
鈴木:嬉しいですね。
『仮面ライダー』100周年まで後50年、紡いでいかないといけません。
物語を0から創り出していく大変さは、監督さん、脚本家さん、プロデューサーさん、スタッフの皆さんが凄く感じる部分だと思います。
僕たち俳優は、それを表現する立場として、物語を100に仕上げる中の数%が仕事です。
僕自身も一生をかけて、苦しみながらも作っていかなきゃと思っています。
ただその上で、監督が「良い作品ができた」と言ってくれたり、観て下さった方々が「良かった」と言ってくださるのを目標にしていきたいです。
どんな作品に出演していても、「完璧だ」と思えることはないです。「もっとできるのに!」と、積み重ねていくのが、俳優という仕事だと思います。
田﨑監督は、映画の舞台挨拶が終わる頃に、「今度は『仮面ライダー』として会いたいね」って言ってくれていたので、それを叶えられるように僕自身が100%の力を出せるように頑張って、早く会いたいと思います。
—— 「石ノ森章太郎」という存在が、日本の映像文化に与えた影響について、どう思われますか?
鈴木:石ノ森先生や藤子不二雄先生【10】、手塚治虫先生【11】など、日本の漫画界を作った人たちがいて、今、マンガやアニメが世界中で評価されていますよね。
そのトップのひとりである石ノ森先生の漫画を原作として制作された『仮面ライダー』が51年前に放送されて、さらに続編が作り続けられて、それが今の僕たちにまで受け継がれている。受け継ぐことができるかたちで、その大元を作った石ノ森章太郎先生は、本当に偉大な方だと思います。
—— 今回、石ノ森章太郎役を演じたことは、福さんにとってどんな意味があったと思いますか?
鈴木:『仮面ライダー』45周年の時に、「どんな役でもいいから出演したい」と言っていた小学生の少年が、こういう風に大きな役として『仮面ライダー』作品に呼んでいただけました。本当に「今まで頑張って来て良かった」と思うし、今後の僕にとっても凄く大事な作品になっています。
さらに、仮面ライダーとして現場に戻りたい。僕にとって目指す場所だということを、あらためて感じました。
作品に携われたこと、石ノ森章太郎先生を演じられたことは、一生の誇りです。
—— 練馬区では『映像∞文化のまち』として区内外に発信していきます。練馬区の映像文化の取り組みに対して一言いただけますでしょうか
鈴木:僕にとっても練馬区は、縁のある地です。
これからも俳優として仕事をしていく上で、練馬区がこういう活動をしてくださっているのは本当にありがたいです。
今後、練馬区を中心に映像業界が活性化してくれて、世界水準まで行けるようになれると良いなと思います。僕自身も、そこで第一線を張れるよう頑張っていきたいです。
—— 最後にメッセージをお願いします
鈴木:練馬区出身とか、日芸出身の俳優さんや監督さん、そして石ノ森先生のように練馬区で活躍される方などを中心に、練馬が起源となって、もっともっと映像業界も盛り上がっていってほしいです。
その一役を担えるように、僕も頑張っていかなきゃなと思えるインタビューでした。
そして、石ノ森章太郎先生、『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』の素晴らしさを、観ている人だけではなく、いろんな人たちに知ってほしいなと思いました。
ありがとうございました。