映像∞文化のまち ねりま

ねりま映像人インタビュー

第2回 田﨑竜太監督 後編

第2回 田﨑竜太監督 後編

2021.06.02

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このねりま映像人インタビューでは、練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化のかかわりを紹介していきます。 第2回のゲストも前回に引き続き、映画監督、テレビドラマ監督の田﨑竜太さんです。

—— 田﨑監督は、撮影所で、数々のシリーズ作品に監督として参加しています。その中で若いキャストがシリーズの中でどう育っていくのか、そのポイントはどこにあるのでしょうか。

田﨑:前回、「キロバイトがギガバイトになっていく」と話しましたが、お芝居はまさにその中核。 たとえば、「仮面ライダー アギト」(1)の津上翔一(2)の台詞は脚本家の井上敏樹(3)さんが書かれていますが、作品の中では“津上翔一”が話しているわけです。台本に描いてあるセリフを、キャラクターとして言葉に出すには、エモーションというか動機を作らないとならない。普通の会話なら難しくはないでしょうけど、感情を乗せるときには、そのエネルギーがどこから来るのか探さなきゃならない。お芝居がちゃんと見えるようにするには、内面を作らなきゃならない。 俳優さんのお仕事っていうのは、内面を作ってカメラの前に立つことだと思うんです。 経験値によって芝居も上手くなるんだと思いますが、それが徐々に上がるのではなく、ある一点でポーンと上がるのが良い役者さんじゃないかと思うんです。 それは、仮面ライダー(4)の現場で、何度も経験しています。 昨日までは平たかった所に、今日、富士山が出来るという感覚。それがこの仕事の面白いところですね。

—— 若いスタッフの成長についてはいかがでしょうか?

田﨑:視聴者の皆さんから見てわかりやすいのは、若い役者さんの成長ぶりだと思いますが、それと同じように、若いスタッフも成長しています。 たとえば「仮面ライダー」を僕一人で監督していると、意外と育たないかもしれません。 でも実際は4、5人の監督が入れ代わり立ち代わり演出していますから、若いスタッフも洗礼を受ける。監督によって演出も全然違いますからね。この監督で通用したことが、違う監督では通用しない。そういうことを経て、成長していくんだと思います。僕自身も「仮面ライダーBLACK」(5)のときがそうだったので。

—— 撮影所で1年間のシリーズ作品、それを複数年にわたって参加するということが、ご自身にとってどういう価値があったでしょうか?

田﨑:僕がこの仕事に就いたころは、1年間続く作品が多かったと思います。「特捜最前線」(6)など東映で作っていましたし。そこに参加するということは、勇気がいった気がします。 撮影スタッフって、9時~5時で終わる仕事じゃないわけで、そこで1年間働くって事に、大変な責任を感じました。 同じ撮影所で複数作品が並行して複数本動いていた時代で、他の作品の助監督と比べられたりもするので、すごいプレッシャーもありました。 ゆりかごであり、競争の場であり。なるべく早く、サードからセカンド、チーフに上がりたいと思っていましたね。

—— 1年間のシリーズ作品は、今の日本の映像文化にとってどういう価値があるのでしょうか?

田﨑:「POWER RANGERS」(7)でアメリカに行った時に、1年間ほぼ休みなく30分のアクション作品を量産し続けることに対し、非常に驚かれました。 アメリカのTVドラマはシーズン制で、「POWER RANGERS」も秋にスタートして夏は再放送の期間になるんです。ほかにも放送休止期間があったり、月金で新作を毎日放送したり、視聴習慣の違いがありました。 なので、1年間続くということの価値を、逆にアメリカの方から教えていただいた気がします。 そもそも、撮影所ってシステムは、「人を育てよう」と考えた人が作ったんじゃないかと僕は思うんです。 僕は職人になりたかった人間なので、撮影所での「修業」はありがたかったし、優れたシステムと思っています。

—— 練馬区では昭和初期以降、実写・アニメを問わず映像をつくる環境が整っており、数多くの作品がこの練馬の地から作り出されてきました。こうした状況を背景に練馬区では『映像∞文化のまち』として区内外に発信していきます。練馬区の映像文化の取り組みに対してメッセージいただけますでしょうか。

田﨑:練馬に通い始めて30年経ちますが、特撮こども番組のマザー(母)であるし、育んでくれた聖地だと思います。 仮面ライダーが色んなロケ地に行って戦えるのは、(撮影所が)練馬区東大泉にあり、関越道や外環道の入口も近くにある交通の要衝だったりすることが大きいです。 これからもヒーローが生まれていく聖地として、よろしくお願いします。

—— 田﨑監督から最後に一言お願いします。

田﨑:最初に呼んでいただいて光栄です。 練馬区は映像の聖地として、(作品を)作るだけでなく、良い映画館もあります。 練馬区で撮影隊を見かけた時には、暖かい目で見てやってください。 よろしくお願いします。

登場する作品名・人物名等の解説

(1)仮面ライダーアギト
東映制作の特撮アクションドラマ「平成仮面ライダーシリーズ」第2作。2001年1月~2002年1月放送。全51話。田﨑監督がパイロット監督を務めた。
(2)津上 翔一(つがみ しょういち)
仮面ライダーアギトの主人公。賀集利樹(かしゅう としき)が演じた。
(3)井上敏樹さん
脚本家。大学在学中の1981年に『Dr.スランプ アラレちゃん』第24話「アラレちゃん大変身!!」にてデビュー。1985年の『どきんちょ!ネムリン』より、東映特撮作品にも本格的に参加。『仮面ライダーアギト』『仮面ライダー555』ではメインライターを務め、『仮面ライダー龍騎』でも多くの脚本を担当している。
(4)仮面ライダー
東映制作の特撮アクションドラマ「仮面ライダーシリーズ」のこと。 第1作目は、1971年4月~73年2月まで全98話を放送。
(5)仮面ライダーBLACK
東映制作の特撮アクションドラマ。前作『仮面ライダースーパー1』以来、6年ぶりに制作された『仮面ライダー』テレビシリーズ。1987年10月~1988年10月放送。全51話。田﨑監督は、大学在籍中にサード助監督として参加。続編の『仮面ライダーBLACK RX』(1988~89)ではセカンド助監督を務めた。
(6)特捜最前線
テレビ朝日・東映で制作し、テレビ朝日系列で1977年から1987年まで放送された刑事ドラマ。
(7)POWER RANGERS
東映制作の特撮アクションドラマ「スーパー戦隊シリーズ」の英語版ローカライズ作品「パワーレンジャーシリーズ」のこと。 田﨑監督は、1999年2月~12月放送の第7シーズン第5作目「Power Rangers Lost Galaxy」(『星獣戦隊ギンガマン』がベース。全45話中20本を担当)と、2000年2月~11月放送の第8シーズン第6作目「Power Rangers Lightspeed Rescue」(『救急戦隊ゴーゴーファイブ』がベース。全40話中18本を担当)に参加した。

プロフィール

田﨑 竜太(たさき りゅうた)監督 映画監督、テレビドラマ監督。『仮面ライダーBLACK』(87)に助監督として参加。『超力戦隊オーレンジャー』(95)でテレビドラマ監督デビュー。『星獣戦隊ギンガマン』(98)でパイロット監督を務める。 1999年~アメリカで『POWER RANGERS』シリーズを監督。帰国後『仮面ライダーアギト』(01)『仮面ライダー龍騎』(02)『仮面ライダー555(ファイズ)』(03)のパイロット監督を3年連続で担当、劇場版も手がけた。 ドラマ『美少女戦士セーラームーン』(03)、オリジナルSFドラマ『Sh15uya(シブヤフィフティーン)』(05)劇場映画『小さき勇者たち〜ガメラ〜』(06)ドラマ『科捜研の女』(13~参加)『機界戦隊ゼンカイジャー』(21)など、多数のテレビ、映画作品を監督する。最新監督作『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は、2021年7月22日(木/祝)に公開予定。
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