—— 今も大泉の撮影所【1】に通っていらっしゃると思いますし、東映アニメーション【2】さんの作品でも通っていらしたと思いますが、思い出の場所などありますか?
冨岡:今は駅から撮影所に行って、会議が終わって駅に戻る。みたいな生活をしていますから思い出といってもなあ。
でもそう、中村橋に『天地無用!』【3】などで有名なAIC【4】というアニメスタジオがあって、『バトルアスリーテス大運動会』【5】とかも同じスタジオでしたが、そこでのお仕事で(中村橋に)一時期通っていました。そのときの脚本チームも『ケータイ捜査官7』【6】と一緒です。福島さん【7】がいて神山さん【8】がいてという座組で、会議が終わると中村橋駅の近くの居酒屋に毎週立ち寄って、終電まで飲んでいた記憶があります。
あと、『ビックリマン2000』【9】というアニメをやっていたときに、練馬駅からスタジオコメット【10】まで歩いて通っていた記憶があります。だんだん慣れてくると、景色を変えたくて歩くルートを変えるんです。通学路みたいな同じ道じゃつまらないから、別の道を通って「こんなところにこんな店がある!こんな古本屋がある!」みたいなことをやっていました。
—— 松田悟志さん【11】が大泉の撮影所に通うのに、時々駅からのルートを変えて、セリフを覚えながら歩いていたという話をされていました。
冨岡:わかります。そうしたくなっちゃうんです。いつも同じだと息も詰まるし、新しい道を歩くと、たとえ民家の並びでも、なんだかちょっと楽しいんですよ。だからあれはちょっとした散歩でしたね。
—— 冨岡さんは『ポケットモンスター』【12】、『イナズマイレブン』【13】、『ダンボール戦機』【14】、『ヘボット』【15】、『ONE PIECE』【16】、『ドラゴンボール超(スーパー)』【17】など大ヒットジュブナイルアニメを手がけていらっしゃっています。一方で、今の『爆上戦隊ブンブンジャー』【18】や、2008年の『ケータイ捜査官7』など、実写特撮のシリーズ作品も担当されています。アニメと実写の両方を手がける中で、その違いをどのように感じていらっしゃいますか?
冨岡:アニメは脚本家と監督とプロデューサーがいて、大体監督が中心になるんです。でも実写の世界は、
例えば第5話を担当する監督さんはいるけれども、シリーズ全体を見る監督さん、例えば『エヴァンゲリオン』における庵野さん【19】のような、ああいう立場の人は実写ドラマにおいては存在しないんです。
度々話題に出ている『ケータイ捜査官7』も、三池崇史監督【20】はシリーズ監督という名目ですが、毎週(脚本会議に)立ち会うわけではないんです。お話自体は私とプロデューサー陣で作っていたので、ここが一番の違いかもしれません。実写のTVシリーズ、特に連続物においては、プロデューサーが総監督の立場ですね。
—— シリーズ作品の場合は特に、ということですね?
冨岡:映画は全く違います。映画はやはり監督の存在が大きいです。あくまで、TVシリーズ、特に連続物ですね。以前フジテレビで実写のドラマ書いたときも、やっぱりびっくり。それが初めての実写経験でしたが、結構びっくりした覚えがあります。
—— アニメーションを数多く手がけてきた冨岡さんとして、今、実写を作っている満足感はどんなところですか?
冨岡:生身の役者の表情です。もうこれに尽きる。生きた役者さんのさりげない表情は、アニメ(の作画)だと表現しきれないんですよ。
『ブンブンジャー』は特に、レッドの大也くん【21】がすごくいい顔をするんです。
私は説明セリフをなるべく書きたくなくて、特に大也に関しては、あえて劇中の人物にも「言葉足らずだ」と言わせてますが、必要以上に喋らせてないんです。70年代にはそういう映画やドラマがたくさんありました。それをお手本にして、表情で語る感じ(の脚本)にはしているのですが、大也は台詞のその裏の裏まで読んで、本当に表情で語っているのですごい子だと思います。バイオレット【22】が仲間になる回のバイオレットと2人のやり取りも、「まさしくこれ!これを見たかった!」という表情とお芝居でした。
「脚本を読み込んで演技に反映する」というのは、アニメだと絵コンテと演出を経て声優さんが声を入れるので、工程が細かいんです。(実写は)そこをぶっ飛ばして脚本からポーンと役者と監督さんの演技指導になっていくので、割とダイレクトに書き手の感情が役者さんに伝わっているのをとても感じています。『ケータイ捜査官7』のときもまさしく、「おお、すごい!」と思いながら見ていましたし、今回の素顔の戦士6人みんな、見ていて幸せになります。
だからこの現場に行くと、とても楽しいですね。最終回が来て欲しくないです。
—— 1年にわたる実写特撮シリーズの構成は、2008年の『ケータイ捜査官7』が最初でしたが、どんなお気持ちで臨まれたのでしょうか?
冨岡:実写もアニメも、1年間の番組をやるという意識は変わらないです。「1年間、これを子供たちに届けるんだ!」という意識、その一点のみですね。
—— 数多くのヒット作を生み出し、またこうして念願の特撮ヒーロー作品を手がけた今、次なる野望、目標はお持ちですか?
冨岡:それはもうやはり、オリジナル脚本しかない。作り手にとって「自分の企画で映画を作る」というのは究極の夢です。
『ブンブンジャー』で素顔の役者さんの表情の演技に痺れているので、実写でやりたいですね。
今はちょっと難しいけれど、昔の日本の映画がまだ何でもありだった頃の、ああいう時代のあの空気の映画がやりたいな。
というのも、『あぶない刑事』の新作【23】が今年劇場公開されて、楽しかったんです。ああいうのをやりたいと思います。どうしてもね、拳銃ドンパチは男の子の憧れですよね(笑)。
—— 最後に一言ご挨拶いただけますでしょうか?
冨岡:『ブンブンジャー』、まだまだ盛り上がっていきますので、お楽しみに!後半も見てくれたら嬉しいです。ありがとうございました。