練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化の関わりを紹介する「ねりま映像人インタビュー」のダイジェストテキストです。
今回と次回のゲストは、脚本家の冨岡淳広さん。
冨岡さんは、『ポケットモンスター』や『イナズマイレブン』など大ヒットアニメの中核を担ってこられたほか、『ONE PIECE』や『ドラゴンボール超(スーパー)』など、東映アニメーションの作品も数多く手がけていらっしゃいます。
現在は、練馬区大泉の東映東京撮影所にある東映テレビ・プロダクションで制作され、現在放送中の「スーパー戦隊シリーズ」第48作品目となる『爆上戦隊ブンブンジャー』の脚本を担当されています。
今回は絶賛放送中の『爆上戦隊ブンブンジャー』のお話を中心にお伺いしました。
—— 『爆上戦隊ブンブンジャー』【1】大変快調のように見受けられますが、冨岡さんとしては手応えをどのように感じていらっしゃいますでしょうか?
冨岡:この前、『ブンブンジャー』のヒーローショーをやっている東京ドームシティの「シアターGロッソ」【2】に行ったら、親子連れがいっぱいいて、すごくたくさんの子供たちが声援を送っているんです。おもちゃがちゃんと子供たちの手に渡っているというお話も聞いているので、ミッションを果たしている手応えを感じています。
忘れたくないのは、「子供たちが憧れるヒーローであってほしい」ということなんです。
それは『ポケモン』【3】や『イナズマイレブン』【4】を書いてもそうなんですが、まずはちびっこ達。C層(幼稚園保育園から小学校卒業までの年齢層)を中心として、「かっこいい」とか「ごっこ遊びをしたい」と思うような年齢に届くことが大前提ですから。
—— この作品に冨岡さんが参加することになった経緯は、どういう形だったのでしょうか?
冨岡:2年前にWebでオンエアされた『風都探偵』【5】という、『仮面ライダーW』【6】のコミカライズをアニメ化した作品がきっかけです。そのシリーズ構成を担当していた樋口達人【7】というライターが、『イナズマイレブン』と『かいけつゾロリ』【8】を一緒にやっていた仲間で、私がサブライターとして呼ばれたんです。
『仮面ライダーW』のコミカライズですから実写のロジックがあるんですよ。樋口くんは、私が特撮好きなのを知っていて、かつ樋口くん自身が実写の経験がなかったので、知恵を借りたいということでした。
『風都』のプロデューサーは『W』の塚田さん【9】ですが、今の『ブンブンジャー』のプロデューサーの久慈さん【10】が塚田さんに「冨岡さんの連絡先を教えてください」と相談したことでつながりました。久慈さんは、私が10数年前に書いた『バトルスピリッツ』【11】というカードバトルのアニメのファンだったそうなんです。その久慈さんが『キングオージャー』【12】の後番組を担当することになり、脚本を私に書いてもらいたいということでお声が掛かったんです。
久慈さんに呼んでいただき、ニチアサ【13】の資料をドカンと見せられたときに、何も聞かずに「やります!」と返事をしたので、向こうがびっくりしていました。
でも本当にやりたかったジャンル、やりたかったヒーロー、やりたかった変身ものですから、中身がどうこうじゃないんです。その現場に自分が入るということ自体が、私にとっては初恋が叶うようなものでした。
—— 今回、先ほどお話があった樋口さんのほか、山口さん【14】、森地さん【15】、古怒田さん【16】という冨岡さんが集められた脚本チームでシリーズを書かれていますが、チームで一つの作品を仕上げていくことの魅力や良さなど、どのように感じられていますか?
冨岡:チームの方が面白いんですよ。1人で書くのはつまらない。例えば私が「主人公のレッド・範道大也がこうするよ」と書いて、別のライターさんが「大也にこんなことをさせたら面白いよね」とアイディアを出してくる。そうすると大也のキャラクターの幅が広がるんです。他のキャラクターもそうですが、色々なライターさんが考えてくる「こんなことあったら面白いよね」、「これやらせたら盛り上がるんじゃない?」という、こっちが予想してないこと、想定もしてないことを、ライター陣が好き放題考えるシステム、スタイルが、私は好きなんです。
—— このタイミングでこの話数をこの人に、というライターさんへの振り分けのようなところは、どんなことを意識されているのでしょうか?
冨岡:それは挙手制です。振り分けなんかしていません。「次、何話やる?」みたいな。例えば「錠の話を入れようと思うんだけど、誰がやる?」「俺がやる!」と、そういうスタイルです。自由度が高いですよ。
©東映ビデオ・東映AG・バンダイ・東映
—— 本編の内容の話にも入っていきたいと思います。今回の戦隊を作り上げるにあたって、どういう点を意識してこのメンバー構成を組み上げたのでしょうか?
冨岡:実は久慈プロデューサーから「プロフェッショナルのチームの話にしたい」というオーダーがありました。(ブンブンジャーは)基本的に馴れ合わないチームなんです。「全員別の仕事を持っているけど、ミッションがあれば集まってくる」というふうにしたいと。
キッズコンテンツですから、常に素顔の役者さんたちが集っている方が良いのですが、そこのバランスがとても難しいなと思いながら書いています。
自分の趣味で言えば、刑事ドラマだったり「必殺」シリーズ【17】などの、すごくドライなキャラクターの関係性を引用しながら考えています。常に一定の距離感がありつつ、でもだんだん信頼ができていくような。
最終回に向けてチームとして一つにまとまっていく話にはなりますが、私の中では「“ハシリヤンを倒す”という同じ目標を持って集まっている、それが仲間というなら仲間」という意識で作っています。
—— セカンドラップは「ヒーローと相棒」ということですが、大也とブンドリオの関係は、『ポケモン』のサトシとピカチュウ、『ヘボット』【18】のネジルとヘボット、『ケータイ捜査官7』【19】のケイタとセブンという、冨岡さんが比較的よく描かれている人間と人外、人ならざる者との相棒コンビであるというようなことも注目を集めていると思われますが、この辺りは意識されていますか?
冨岡:いえ、結果そうなっていますが、お仕事でそういうキャラ付け、キャラ配置になっているだけで、それが好きなわけではないんです。
私が今までやってきた少年バトルホビーもののようなキッズ系のジャンルでいくと、売りたいものと、それを使う人間キャラクターのバディにならざるを得ない。
ブンドリオも、「巨大ロボを売りたい」でも「巨大ロボがラストしか出ないのは寂しいね」ということで、しかもそのおもちゃの「ブンブンブーン」という音声が松本梨香さん【20】に決まっていたので、もう「ブンドリオをキャラにして、松本さんの声にしようよ!」と。これも自然の流れでした。
元々最初に作った設定だと、ブンドリオはもっと年齢が高かったんです。でも松本さんが声を当てるとなった時に年齢感を下げて、元気のいい少年ボイスで「大也と一緒に何か夢叶えようぜ!」というキャラクターが出来上がりました。松本さんの声があったからこそ、ブンドリオはああいうキャラクターになったんです。
—— 『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』【21】が7月26日から公開が始まりましたが、冨岡さん的に見どころはどんなところでしょうか?
冨岡:爆発がすごいです!昭和の特撮を見てきた人間からすると、やはり特撮ヒーローは爆発してなんぼですよ(笑)。「うわー!すげえ爆発してる!」と思いながら試写を観てきました。
それから先ほど、「プロフェッショナルの集まり」という言い方をしましたが、まさしく6人それぞれの得意分野で事件解決に当たっています。シナリオ上意識したところでもありますが、「こいつら、ちゃんとやってるわ!」というような見え方ができると思います。本当に細かいことを皆さんがやっているので、どのキャラクターも、「ああ、らしい活躍している!」と、楽しめると思います。
—— シリーズもまもなく放送折り返し地点を迎えますが、今後、特に注目してほしいポイントなどあれば教えてください。
冨岡:3クール目にかけて、物語を大きく動かそうとしていて、いろいろびっくりさせる仕掛けを考えています。キャラクターの関係性も、敵方も含めてちょっと変わっていきます。ですので、その辺りも楽しみにしてほしいなと思います。
また、『ブンブンジャー』は基本的には毎週1話完結で、「毎週楽しく見てね」というシリーズではありますが、ビッグバングランプリのこととか、ちょっとずつ仕込んでいる伏線ぽいものが明らかになり始めます。ぐらいは言っておこうかな(笑)。
—— 『ブンブンジャー』ファンの方に一言、メッセージをいただけますか。
冨岡:基本的には6人の毎週の活躍を楽しみにしてほしいですね。もちろんこれから次々パワーアップをしていきますので、それもお楽しみに。
物語はちょっとだけ言うと、序盤に内藤さんっていう、大也のお師匠さんが出てきましたが、それが7月中のオンエアでもう1回出てきます。
この人の他にも、新しい人間のキャラクターを出していますので、それが物語にどう作用するかも、注目していてほしいなと思います。
でも何より、みんなでごっこ遊びをしてほしいです。
小さい子も大きなお友達も、みんなで「ブンブンブーン!」と言ってもらえたら、私は一番それが嬉しいです。
ありがとうございました。
次回も引き続き冨岡淳広さんにお話いただきます。
明日の勇気につながる1作冨岡淳広さんのおススメ!
『ペリカン文書』
(1993年/アメリカ/原作:ジョン・グリシャム/監督・脚本:アラン・J・パクラ/出演:ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン、サム・シェパード、ジョン・ハード、トニー・ゴールドウィン ほか)
2人の最高裁判事が暗殺された事件について、自分の立てた仮説で論文を書いた女子大生ダービー・ショウ。だがその仮説は偶然にも真実を突いており、国家的陰謀に巻き込まれた彼女は執拗に命を狙われる。
冨岡:最近、仕事で久しぶりに見直した『ペリカン文書』は、面白かったですね。
今日のインタビューは、東京都知事選の翌日なんですけど、まさしくその手の陰謀論的な内容で、面白かったですね。ちゃんと悪が成敗されてます。カタルシスがとてもありました。
プロフィール
冨岡 淳広(とみおか あつひろ)
脚本家。これまでにテレビアニメ『ポケットモンスター』シリーズや『イナズマイレブン』シリーズ、『バトルスピリッツ』シリーズや、東映アニメーション作品『ONE PIECE』、『ドラゴンボール超』などのアニメ作品のシリーズ構成・脚本を数多く手掛ける。また、実写ではテレビドラマ『ケータイ捜査官7』のシリーズ構成・脚本を担当。
現在放送中のスーパー戦隊最新シリーズ『爆上戦隊ブンブンジャー』では、メイン脚本を務める。