—— 「ハリケンジャー」【1】10周年記念作品『忍風戦隊ハリケンジャー 10YEARS AFTER』【2】制作の原動力の中心に長澤さんがいたと伺っています。どんなきっかけだったのでしょうか?
長澤:これはですね。私が「ハリケンジャー」が大好きなんですよ。多分一番の「ハリケンジャー」ファン(笑)。「もう1回新作を撮りたい!誰もやったことのないことをやりたいんだ!“やーさん”、やろうよ!」と、山本康平くん【3】に相談していたんですけどなかなか。
そんなこと言い出す人もいなければ、「そんなの撮ってどうするの?誰が見るの?今までやったことないじゃん」と、たくさんの人に言われました。
だけど、「面白そうだね、やってみようか」みたいに(話に)乗ってくれる東映の方とかもいて、現実になった感じです。
ざっくり言いましたけど、やりたいって言い出してから3年ぐらいかかったのかな?
『ゴーカイジャー』【4】の時に、「ハリケンジャー」の3人が揃ったというのも、また一つのきっかけになっていて。「やっぱりまたやりたいよね」と、そこでみんなの気持ちを確認できたり。
その年か前年の日笠淳プロデューサー【5】のお誕生日会で、5人揃ったんですよ。そこで「やらない?やりたくない?」とみんなの気持ちを確認して、本格的に私と山本くんで動き出したって感じですね。
(東映さんからは)「私達を説得できるようなものを用意して」と言われたので、山本くんに企画書を書いてもらって東映さんに持っていく。ダメ出しされて、今度は脚本を書いて持っていく。みたいなことをずっと繰り返して、「やるか!」という感じになったのが経緯です。
山本くんは日笠プロデューサーから、厳しい言葉をいっぱい言われたそうです。でも一番基本となる台本の書き方とか、企画書の書き方を、日笠さんに教えてもらったと話していました。
—— 練り上げたもので、「これだったらいけるか」という決定になったポイントは、どう認識されていますか?
長澤:「偉い人たちが動き出したぞ、やるのか?」みたいになったときに、「じゃあ足並み揃えてちゃんと脚本家さんを立ててやりましょうか」と、結構な方が集まって銀座で話しました。
キャストが全員出ることが条件だったので、「本当にみんなやりたいのか確認しろ」と言われて確認したんです。
姜暢雄くん【6】とか白川裕二郎くん【7】も「そういうのが、後輩にも繋がればいいね。だったらやるよ」と言ってくれて、ウェンディーヌ【8】もフラビージョ【9】も出るって言ってくれて。
みんなの気持ちが一つになったから、(東映も)動いてくれたのだと思います。
—— 撮影が始まったときは、どんな気持ちでしたか?
長澤:夢のようでした。オールスタッフのときにみんなが並んでるのがもう本当に夢のようで、信じられなかったですね。「私達、すごいことやっちゃうんじゃない!?」というような。
TVシリーズ当時のスタッフも大集合してくれたので、それがすごく嬉しかったですね。
私たちにとっては、「ハリケンジャー」しかないから当然だけど、スタッフの方から見たら何十作品もある中の一つでしかない「ハリケンジャー」をちゃんと覚えていてくださって、大事にしてくださっているからこそ協力してくださって。そのときのTVシリーズを撮っている中で時間を調整してくださったり。なので、本当に幸せだなと思っていました。毎日ワンカットワンカット終わっていくのが寂しくてしょうがなかったですね。
—— 劇中の七海のセリフが、長澤さんの思いそのものに感じられました。これは脚本の宮下準一さんが長澤さんの思いを汲んで書いたセリフなんでしょうか?
長澤:違うんですよ。これは、全然セリフが書いてないアクションパートだったので。このときは「お前セリフ考えろ」とアクション監督の竹田道弘さん【10】に言われて、3パターン用意したんです。そうしたら竹田さんが選んだのがこのセリフで(笑)。
これはもう完全に私の思いで、もうちょっと七海っぽいのもあったんですけどね。
これを選んだのも竹田さんの愛かなと思って、言わせてもらいました。
—— 完成された作品を、発起人であり原動力の1人だった長澤さんはどのようにご覧になったのでしょうか?
長澤:10年前は、とにかく新作が撮りたくて。そのために何年も東映さんに通っていたので、「本当に夢が叶ったんだな」という感じで、皆さん忙しいのにたくさん協力してもらって感謝しかないと思いました。
「これが良い結果を出さないと次には繋がらないんだよ。自分たちの“やりたい”って気持ちだけじゃ、いろんなことは動かないよ」とずっと言われていたので、のちのち『特捜戦隊デカレンジャー』【11】『炎神戦隊ゴーオンジャー』【12】までやっていただけたことが何よりも嬉しいです。
戦隊シリーズにも夢を与えられたかな。「役者として好きにやれる場所があるよ」というようなものも見せられたかなと思っています。
—— この根っこの段階から長澤さんも関わっていらしたのですね
長澤:今から2年前ぐらいに、山本くんと私と東映さんに行って、塚田英明プロデューサー【14】と中野剛プロデューサー【15】に、「20周年の新作をやりたいんですけど、どうでしょう。できそうですか?」って言ったら、塚田さんも「やりますか」と(笑)。
でも、「10YEARS」をやっているので、新しいこと、面白いことをやらないとお客さんは喜ばないし、どうしようかっていうときに、「私達忍者なのに、京都の太秦で撮ってないから行きたい。じゃあハリケンジャー×京都で時代物にしようか」というところで、今回の20周年が動き出したんです。
塚田さんはその場で京都に詳しい脚本家さんに当たろうと電話してくださって。
監督さんをどうするかとなったときも、渡辺勝也監督【16】が塚田さんに出した年賀状に「もうすぐハリケンジャー20周年ですね」と書いてあったというご縁もあり、その場で渡辺監督に電話したら「やる!」と言ってくださって、企画がスタートしました。
—— 同じ東映ですが、東京の大泉撮影所【17】と比べて京都の太秦撮影所【18】はどんな感じだったのでしょう?
長澤:全然違いました。以前、別の作品で伺ったこともあるのですが、京都はすごく厳しくて、ルールがいっぱいあってというイメージだったので、ちょっと構えていたんです。
でも今回は知っているスタッフがすごく多いし、横を見ればいつもの「ハリケンジャー」がいるので、そういう意味では安心でしたけど、京都と東京は違うなと。
でも、根本にあるところは「良い作品を作ろう」というところなので、そういうところは一緒なんです。
ルールももちろん、お着物ですし、かつらなので、根本的に準備するものも違えば、ルールが違って当然ですよね。
なのですごく新鮮でした。「どうしたらいいの?どうするの?」って言いながら、時代劇に慣れている姜くんとかにいろいろ教えてもらったり。めちゃめちゃ楽しかったですね。
—— 一般のお客さんも入れる太秦映画村【19】を使っての撮影もありましたね
長澤:そうですね。一応「こっちへは来ないでください」とコーンで仕切った感じでしたけど、全然普通に見られたので。
何人かは「あれ、ハリケンジャーじゃない?」と気づいていましたね。見た目が全然違うので、びっくりされてましたけど(笑)。
—— 敵役のオイランダ・陽月華さん【20】をはじめ、新しいキャストの方との共演はいかがでしたか?
長澤:華さんはめちゃめちゃかっこよくて。
初日にご一緒して、同じシーンはなかったですけど、あの服をあんなに着こなせて、妖艶でめちゃめちゃ素敵で、だけど撮影が終わってかつらを取ると、とっても男前で。
一緒にお食事も行かしてもらったんですけど、もうサバサバしていてめっちゃかっこいい。
「オイランダさんのおかげで、今回の映画は成功してるな」というぐらいの素晴らしい悪役を演じ切っていただきました。特撮も初めてですし、花魁もわからないからYouTubeを見て勉強したっておっしゃっていました。ご一緒できて、すごく勉強になりました。
—— そして、TVシリーズでシュリケンジャーの声を担当した松野太紀さん【21】が、まさかのご家老的な役で出演されています
長澤:今回、20周年を作るとなったときに、山本康平くんが「絶対に松野さんを出す。それが俺のミッションだから」とずっと言っていて。10周年のときに出演の機会を作れなかったというのもあったので、出演が叶ってすごく喜んでいました。
映像で松野さんの声を聞くだけで、「シュリケンジャーだ!」って鳥肌がたってきます。
でも現場ではすごくおちゃめで、「いつもはアフレコなので、僕の背中を見ながら皆が僕の芝居を見てるけど、今日はみんなが目の前から(芝居を)見ていて恥ずかしい。こんなセリフ言えない!」と珍しく緊張していて、とってもかわいらしかったです。
今回、松野さんもそうですけど、西田健さん【22】、そして高田聖子さん【23】も快く出演してくださって、レギュラーメンバーが揃っているというところで、当時観ていた方には「懐かしい」と絶対思ってもらえるかと。
みんなが出てくれると、私達だけじゃ足りない「ハリケンジャー」が完成する。みんなが揃って一つのチームなんだなというのを感じましたね。
—— 長澤さんから見た、20周年記念作品の注目ポイントをおすすめいただけないでしょうか?
長澤:注目ポイントはいっぱいあるんですけど、私の水面(みなも)走りをはじめ、山本くんも塩屋瞬くん【24】も姜くんも白川くんも、「20年歳とってるよね?」と言いたくなるぐらい体を張ったすごいアクションを頑張ってます。
今回の作品は、江戸時代と現代の「ハリケンジャー」という二つの世界の物語ですけど、見せ場は何と言ってもアクションかなと思います。めっちゃカッコイイので是非観てください!
—— 長く続くスーパー戦隊の中で10周年記念作品、20周年記念作品という新しい地平を「ハリケンジャー」が切り開いていますが、「ハリケンジャー」の今後の野望などあればお聞かせください
長澤:まずはこの20周年作品をたくさんの方に観ていただいて、またこの作品が今後も他の戦隊の子たちに繋がる作品の一つとなれば嬉しいなって思っています。
夢を語るとたくさん出てくるんですけど(笑)。
とにかくたくさんの方に、この作品を観てもらいたいなと思います。
—— 長澤奈央さんとしての野望などあればお願いします
長澤:私の野望は、戦隊シリーズで、おぼろさん【25】的な役で帰ってくる。それをずっと言っているのですが、なかなかお話をもらえないんです(笑)。いつか、戦隊の現場に恩返しできるようになりたいなと思っています。
—— 長い時間お付き合いいただきましてありがとうございます。最後に一言ご挨拶いただけますでしょうか?
長澤:今日はありがとうございました。「ハリケンジャー」20周年の新作映画がもう少しで公開になります。当時観ていた方ももちろん、全く観てないよっていう方も楽しめる、特撮×時代劇の新しい作品になっていますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら幸せです。よろしくお願いします!