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ねりま映像人インタビュー

第34回 中澤まさともさん 後編

第34回 中澤まさともさん 後編

2025.02.17

こちらのコンテンツは、是非音声版でお楽しみください

練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化の関わりを紹介する「ねりま映像人インタビュー」のダイジェストテキストです。ゲストは、前回に引き続き声優の中澤まさともさん。
中澤さんは、練馬区出身で日本大学芸術学部に進学。声優業では、練馬区のアニメ制作会社スタジオ雲雀系のラルケが制作した『ギヴン』シリーズへ出演するほか、スーツアクターとして東映東京撮影所製作の『仮面ライダー』シリーズにも出演されています。
今回は、練馬区のアニメ制作会社スタジオ雲雀系のラルケが制作した『ギヴン』シリーズやスーツアクターとして参加された東映東京撮影所製作の『仮面ライダー』シリーズのお話を中心に伺っていきたいと思います。

—— 練馬区のアニメ制作会社スタジオ雲雀【1】系のラルケ【2】が制作した『ギヴン』シリーズについてお伺いします。TVアニメ『ギヴン』【3】に参加することになった経緯はどのようなものでしたか?

中澤:元々原作を読んでいたので、作品は知っていたんです。そこでTVアニメをやるということで春樹役としてオーディションに参加しました。ドキドキしましたね。オーディションを受けたときは、「受かるかも」って思いながらやっていましたし、受けた後は、「もしかしたら落ちたかも、こういうとき大体落ちてるんだよな」みたいな。不安を抱えながら待っていたら、事務所から合格の報告を受けて、とてもありがたかったです。

—— 春樹役【4】を演じる際に大事にしたことはなんでしょうか?

中澤:自然体に演じることです。あと一緒に出演している仲間たち――矢野くん【5】内田雄馬くん【6】江口拓也くん【7】も、そこにいる登場人物として演じるのはもちろんのこと、自然な会話のやり取りを現場全体で重視していたので、僕自身も演じやすかったのもあります。空気に溶け込めるように気を配ったというか、逆に気を抜いたというか、そういうポイントはありましたね。
春樹は突出した演奏能力とかあるわけでもなく、みんなの演奏を下で支える。実際はすごい技術を持ってないと絶対できないことをやってるとは思うんですけど、でも彼自身は自分にあまり自信がなくて、そこでちょっとモヤモヤしてる部分もあったんです。でも「自分はここにいてもいいし、自分のままでいてもいい。当たり前のように自分が演奏していいんだ」というところにたどり着けたのは、登場人物としての成長でもありますし、僕自身も、主役や番組のレギュラーをやっている子たちに囲まれて、初めてアニメのレギュラー番組に臨んだ身としては、本当に春樹と同じような心境だったので、「自分でもいいんだ、やることをやればいいんだ」と思えたのは、僕自身の成長でもありました。

—— 『映画 ギヴン』【8】は春樹と秋彦【9】の関係が見どころのひとつですが、特に大事にしたポイントはありますか?

中澤:相手のことをよく知らずに、春樹は秋彦のことが好きだったんですけれども、それが1回全部リセットされるところがすごく大事なポイントだったと思います。この人は本当はこういう部分がある、実はこんなに努力していたんだ。と知って、もうフラれたのに、なんだかんだで嫌いになれない。それがあったおかげで、お互いに自然と信頼し合える関係になれたことは、演じていても作品を見ていても思いますね。

—— 完成作品をご覧になって、どのような感想をお持ちになりましたか?

中澤:本当に夢みたいだって思いましたね。自分のナレーションで映画が終わるのを見て「こんなに嬉しいことはない」と思いましたし、それが初めてのTVアニメレギュラーとして出演した『ギヴン』というのも非常に思い出深いです。
出来上がりを見たときは、歌がとても素晴らしかったですし、ライブシーンも音のバランスであったりとか、とても繊細に仕上がりを調整して、どんな人にも伝わるように、という気遣いや演出を感じられたので、全員が全員、全力で臨んだ結晶である作品の、中心にいられたのは非常にありがたく思いましたね。

映画 ギヴン 海へ
2025年3月26日(水)発売
given-anime.com

—— 2024年に前後編として『映画 ギヴン 柊mix』【10】『映画 ギヴン 海へ』【11】が公開されました。 4年の時を経て、また春樹役をやる心境はどんなものでしたか?

中澤:春樹を演じることに緊張しなかったんですよね。もちろん作品の中では緊張するシーンはあったんですが、春樹自身は学生組を見守る立場だったので、「この子たちがのびのびとやれるようにするには自分はどうしたらいいのか」を考えながら演じさせていただきました。

—— 公開から2ヶ月後にも生コメンタリーや舞台挨拶などのイベントが実施されました。作品が広がっていくことをどのように受け止めていらっしゃいますか?

中澤:当時、ノイタミナ【12】初のBLアニメ作品としてTVアニメが放送されたんです。そこから6年かけて、LGBTという性別や恋愛の捉え方、世間への広がり方がちょうど変わっていった時期だったので、BLというジャンルが珍しがられることもなくなったのは、いい意味で普遍的なものになったんだなと捉えています。この6年を経てイベントや舞台挨拶などをさせていただいても、男性ファンの方もいらっしゃいましたし、これがちゃんと自然になっていくことって、とても優しいことなんだなっていうのを、ステージに立ちながら考えていました。
最初の『映画 ギヴン』も、本当は舞台挨拶のお話もあったんです。コロナ禍でそれがなくなって、代わりに撮影したキャスト出演映像を上映しました。舞台挨拶が叶わなかったのは悔しかったですし、実際にお客さんがどれぐらい見てくださっているのか、お手紙では感想をいただいてたんですけれど、温度感まではなかなかつかめなかったんです。でも今回舞台挨拶に出たことで、「あ、こんなに応援してもらっていたんだ!」「10回も20回も観る方がいらっしゃるんだ、嬉しいな」と思いながら、客席を眺めていましたね。

—— 中澤さんにとって『ギヴン』という存在はどんな存在ですか?

中澤:これは映画でも言ってるんですけれど、傷ついた痕はずっと消えないし、どこかでまたにじみ出てくるかもしれない。けどそれでも「大丈夫だよ」って言ってもらえたり、「こういう解決の仕方もあるんだよ」って言ってもらえたりした作品だったので、自分の中でも、心の中心に近いところにあると感じています。

—— 中澤さんはスーツアクターとして東映東京撮影所【13】作品の『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』【14】『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊 199 ヒーロー大決戦』【15】などの作品に参加されていますが、どのようなきっかけでスーツアクターの仕事をされたのでしょうか?

中澤:大学在学中にアクションスクールにも通うようになりました。そのとき教えに来てくださっていた方から、ヒーローショーに出てみないかと声をかけていただいたんです。スーツアクターに従事しつつ、アクションを勉強しつつ、とやってる間にいろんな人知り合う機会ができて、その中のお一方に映画撮影に声をかけていただいたのが最初でした。その後『199ヒーロー大決戦』の方は、スーパー戦隊の199人全員を集合させるという試みだったので、スーツアクターが単純計算で199人必要だったわけなんですよね。僕もその中に入れていただいて、『199ヒーロー大決戦』に出演させていただきました。人の縁でいただいたお仕事でしたね。

—— 人数が多いところからカメラに抜かれたり、少人数の乱戦が入るのは演じていて大変ですよね。

中澤:撮影前に「ここで映ります。ここにパン入って映ります」と指示が入るんです。パンが入る前にアクションをし始めて、フレームに誰が映ってなければいけないのかに気を回しながらやらなければいけないんですよね。タイミングも取らないといけなかったですし、しかも199人ヒーローがいるので、何度もリテイクはできず。とにかく1カット1カット緊張の連続でした。

—— これからの野望としてどんな作品に関わりたいか、やりたいことなどをお聞かせいただけますか。

中澤:その昔、『練馬大根ブラザーズ』【16】というアニメ作品がありまして、初めて発表されたときは本当に悔しくてしょうがなかったんです。「ここに練馬区出身の声優がいるぞ!」って大声で叫びたかったんですけれども、当時は力及ばず。今はようやく、練馬区に関連したラルケさんの『ギヴン』や、練馬文化センター【17】で昨年末に『ブレイクマイケース』【18】というアプリゲーム作品のイベントに出演させていただいて、練馬区に凱旋できるまでになったと思うので、次は「アニメのまち練馬」のアニメ作品に出演して、主演して、もっと花を添えられたらなと思っています。

—— 最後に一言ご挨拶いただけますか。

中澤:練馬区は暮らしやすい街です。 大体どこにでも行けます。 ぜひお越しください。

ありがとうございました。

本テキストは音声版のダイジェストです。
是非音声版でお楽しみください。

プロフィール

中澤 まさとも(なかざわ まさとも)
声優。練馬区出身で大学は日本大学芸術学部映画学科に進学。練馬区のアニメ制作会社スタジオ雲雀系のラルケが制作した『ギヴン』シリーズの他、TVアニメ『ブルーロック』や『黄昏アウトフォーカス』や、映画『フリクリ プログレ』などに出演。ゲームやドラマCD、舞台など幅広く活躍している。また、スーツアクターとして東映東京撮影所製作の『仮面ライダー』シリーズなどにも出演する経験を持つ。

ダイジェストテキストに登場する作品名・人物名等の解説

【1】スタジオ雲雀
練馬区に本社がある映像制作プロダクション。1979年設立。長編アニメーション映画『風の谷のナウシカ』を始め数々の作品の仕上協力を担当するほか、TVアニメ『わがまま☆フェアリー ミルモでポン!』シリーズや『メジャー』シリーズ(第1期~第3期)の制作を担当。2006年には練馬を舞台にしたオリジナルテレビシリーズ『おろしたてミュージカル 練馬大根ブラザーズ』を手がけた。
【2】ラルケ
スタジオ雲雀のアニメーション制作チーム。『ギヴン』シリーズを手がける。その他にもTVアニメ『暗殺教室』シリーズや『彼方のアストラ』『地縛少年花子くん』などを制作。
【3】TVアニメ『ギヴン』
2019年に全11話が放送されたTVアニメ。ノイタミナ枠としては初めてのBL作品となり、スタジオ雲雀のアニメーション制作チームラルケが制作を担当した。原作はキヅナツキによる漫画「ギヴン」。TVアニメ化、劇場アニメ化の他、実写ドラマ化、舞台化など多岐にわたる展開を見せる。
優れたギターの腕前をもつ高校生・立夏と、天才的な歌声をもつ同級生・真冬が出会い、バンドや恋に打ち込んでいく――ロックバンド<ギヴン>のメンバーを中心に展開する青春群像劇。中澤さんはバンドをまとめるリーダー・中山春樹を演じた。
原作:キヅナツキ/監督:山口ひかる/シリーズ構成・脚本:綾奈ゆにこ/出演:矢野奨吾、内田雄馬、中澤まさとも、江口拓也 ほか
【4】春樹役
中澤さんが『ギヴン』シリーズのなかで演じた中山春樹のこと。大学院生でバンド<ギヴン>のリーダー。楽器はベースを担当している。
【5】矢野奨吾(やの しょうご)さん
声優。第14回「声優アワード」新人男優賞を受賞。主な出演作に、アニメ『群青のファンファーレ』『遊戯王ARC-V』、ゲーム『アイドルマスターsideM』、文化放送『矢野・小南 絵物語WA-GEI』など。
『ギヴン』シリーズでは主人公・佐藤真冬を演じる。
【6】内田雄馬(うちだ ゆうま)さん
声優。第13回「声優アワード」主演男優賞を受賞。主な代表作に『呪術廻戦』『BANANA FISH』『マクロスΔ』など。実姉に声優の内田真礼がいる。
『ギヴン』シリーズでは、優れたギターの腕前を持つ高校生・上ノ山立夏を演じる。
【7】江口拓也(えぐち たくや)さん
声優・歌手。第17回「声優アワード」主演声優賞を受賞。TVアニメ『アイドリッシュセブン』『俺物語!!』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『東京リベンジャーズ』『SPY×FAMILY』など話題作に多数出演している。
『ギヴン』シリーズでは、バンドでドラムを担当する大学生・梶秋彦を演じる。
【8】『映画 ギヴン』
2020年に公開されたアニメーション映画。バンド<ギヴン>のメンバー・春樹と秋彦、秋彦の元恋人・雨月の関係を中心に、それぞれの恋愛や音楽に対する葛藤を描く青春群像劇。映画のラストは中澤さんのナレーションで締められている。
【9】秋彦
バンド<ギヴン>のメンバーのひとりである梶秋彦のこと。大学ではバイオリン専攻だが、バンドではドラムを担当している。江口拓也さんが演じた。
【10】『映画 ギヴン 柊mix』
2024年に公開されたアニメーション映画二部作の前編。真冬の幼馴染である鹿島柊と八木玄純が組むバンド<syh>のデビューを機に変化する真冬と立夏、柊と玄純の関係が描かれる。
【11】『映画 ギヴン 海へ』
2024年に公開されたアニメーション映画二部作の後編。バンド<ギヴン>のデビューの話が持ち上がるなか、将来を考える時期に来た真冬たちの恋愛模様と成長を描く。
【12】ノイタミナ
2005年4月に設立され、フジテレビと同系列各局で放送されている深夜アニメ枠のこと。“ノイタミナ”は“Animation”の逆読み。『ギヴン』も同枠で放送された。
『ハチミツとクローバー』(05)『もやしもん』(07)『東京マグニチュード8.0』(09)『坂道のアポロン』(12)『四月は君の嘘』(14-15)『BANANAFISH』(18)『うる星やつら』(22-23,24)など、話題となった作品も多い。また、『東のエデン』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『PSYCHO-PASS サイコパス』『ギヴン』など、続編が劇場版として制作・公開される作品も多い。
【13】東映東京撮影所
東京都練馬区東大泉に所在する、東映株式会社の映画スタジオ。
【14】『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』
2009年に公開された、『仮面ライダーディケイド』の映画化作品。「平成仮面ライダー10周年プロジェクト」の第2弾で、クウガからキバまでの平成仮面ライダー、昭和仮面ライダー、Vシネマや映画に登場した仮面ライダー、次期TV作品(当時)の『W』までのオールライダーが集結し、歴代シリーズの悪の組織が結集した大ショッカーとのバトルが繰り広げられる。
中澤さんはスーツアクターとして参加している。
原作:石ノ森章太郎(石森章太郎プロ)/監督:金田治/脚本:米村正二/出演:井上正大、森カンナ、村井良大、戸谷公人、荒井萌、大浦龍宇一、GACKT、大杉漣、石橋蓮司 ほか
【15】『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊 199 ヒーロー大決戦』
2011年に公開された、スーパー戦隊35作記念ならびに東映創立60周年記念の劇場版作品。
上映当時の放送作品『海賊戦隊ゴーカイジャー』と、前シリーズの『天装戦隊ゴセイジャー』を中心に、歴代スーパー戦隊から総勢199名の戦士が集結し、黒十字王が率いる悪の軍団と対決する。
中澤さんはスーツアクターとして参加している。
原作:八手三郎、石ノ森章太郎/監督:竹本昇/脚本:荒川稔久/出演:小澤亮太、山田
裕貴、市道真央、清水一希、小池唯、千葉雄大、さとう里香、浜尾京介、にわみきほ、小野健斗、関智一(ナレーター) ほか
【16】『練馬大根ブラザーズ』
『おろしたてミュージカル 練馬大根ブラザーズ』のタイトルで、2006年に全12話が放送されたTVアニメ。
練馬大根ブラザーズ(ヒデキ、イチロー、マコ)の3人が、様々なトラブルに巻き込まれながらも、自分たちの夢を追いかける姿を描く。原作とアニメーション制作を、練馬区に所在するスタジオ雲雀が担当している。
原作:NDB PROJECT(アニプレックス、スタジオ雲雀)/監督:ワタナベシンイチ/シリーズ構成・脚本:浦沢義雄/出演:松崎しげる、森久保祥太郎、松本彩乃 ほか
【17】練馬文化センター
1983年にオープンした、練馬駅北口にある多目的ホール。2006年と2024年に大規模改修を行っている。1,332名(+車椅子スペース12席)収容の大ホール(こぶしホール)、543名(+車椅子スペース4席)収容の小ホール(つつじホール)、ギャラリー、リハーサル室、集会室、各ホールの楽屋からなり、練馬区の文化発信拠点となっている。
映画『愛情物語』(84)や『Wの悲劇』(84)ではロケ地として使用された。また、2014年放送のTVアニメ『四月は君の嘘』では、演奏会の会場として度々登場する。
公式サイト https://www.neribun.or.jp/nerima.html
【18】『ブレイクマイケース』
2024年5月9日に正式サービスが開始された、iOS・Android向けゲームアプリ。パズルと音楽を組み合わせた「グルーヴマッチパズル」や、カフェのオーナーとなって物語を進めていく「STORYモード」、ミニゲームミニゲーム「SNAP’N SPIN」などが楽しめる。
中澤さんは、登場キャラクターの1人、隠岐谷誓役を担当している。
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