第33回 中澤まさともさん 前編
2025.02.04
こちらのコンテンツは、是非音声版でお楽しみください
練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化の関わりを紹介する「ねりま映像人インタビュー」のダイジェストテキストです。今回と次回のゲストは、声優の中澤まさともさん。
中澤さんは、練馬区出身で日本大学芸術学部に進学。声優業では、練馬区のアニメ制作会社スタジオ雲雀系のラルケが制作した『ギヴン』シリーズへ出演するほか、スーツアクターとして東映東京撮影所製作の『仮面ライダー』シリーズにも出演されています。
今回は、練馬区や日大芸術学部時代のお話を中心にうかがいます。
—— 練馬区のご出身ですが、練馬区といえば、どんな場所、あるいはどんなことが思い浮かびますか?
中澤:本当に小さい頃から見ている街だったので、西武線の練馬駅でまだ電車が地上を走ってた頃から記憶に残っています。練馬文化センター【1】の最初の改修工事や、線路が地上ではなく高架になったのも見てきたので、変化を見守ってきた町でしたし、記憶に残っていることはいっぱいありますね。
それにとしまえん【2】。乗り物もいろいろありましたし、メリーゴーラウンドのエルドラドですね。プロジェクションマッピングをしているコーナーが閉園する4,5年前ぐらいからあって、エルくんとカルちゃんっていう、エルドラドをイメージしたマスコットキャラクターのエルくんの声を当てさせていただきました。としまえんの閉園間際ぐらいに、初めて練馬に関連する作品に関わることができたという、すごく嬉しいことがありました。
としまえんは本当に小さい頃から通ってたので思い出ばかりです。今はもうなくなって、ハリー・ポッター【3】の映像資料やスタジオ資料が展示されている場所になっていますね。映像に関連する施設がやってきたので、練馬のいろんな可能性をまだまだ感じられるなと思っています。
—— 高校在学中から声優プロダクションで研修を受けられていたそうですが、声優を志したきっかけは何だったのでしょうか。
中澤:憧れがまず大きかったですね。小さい頃にアニメも漫画も好きで見ていて、受験勉強の頃はラジオもよく聞いてましたし。僕の母の友人に声優さんが何人かいて、その人たちに会う機会もあって。「あ、声優ってこんなに間近にあるんだ」みたいなのもあって、自分も声優になりたいと思うようになったのがきっかけだったと思います。
—— 大学は日本大学芸術学部【4】の映画学科演技コースに進学されました。
中澤:映画演技を選んだのは、吹き替えって実際に動いている俳優さんに声を当てる仕事なので、実際に動いてる人に声を当てるってどういうことなのか?とか、実際に映像で撮られてる人たちってどんな気持ちでいるのか?感情でいるのか?どんな芝居のアプローチをしているのか?っていうのを学びたかったんですよね。
—— 実際に入学してみて、大学生活はどのようなものでしたか?
中澤:やっぱり自由が大きくて、僕なんか本当にその自由に耽溺したというか、沈み込んでしまったというか。授業そっちのけで、ずっと誰かしらの映像に参加したり、カメラに映ったりとかしていた記憶があります。
実際に撮影に参加して、後でアフレコをしたりとかもしていたので、自分がした演技に対して声を当てる作業の難しさみたいなものも体験できましたね。そのときに出会った仲間たちともいまだに会う機会があるので、とても得られるものは大きかったと思っています。
自分が声優をやってても特にそうなんですけれども、映像作りの中では、後の方の作業なんだな。っていうのをすごく感じられて。映像作品で、声優として「こういう作品があります。どうぞ見てください」っておすすめするんですけど、そもそも映像作品を作っている人たちの技術やひらめき、演出など、そういうものの結晶があって、自分の仕事って成り立ってるんだなっていうのを、すごく感じられました。
—— 大学時代のお話を伺っていて楽しそうな印象を受けましたが、中退の道を選ばれたのはなぜでしょうか?
中澤:単純に単位が足りてなかったというのもあるんです。でも大学時代が一番落ち込んでいた時期でもあって。どんどん自分に自信をなくしてしまっていたときで、留年は確実になって、声優プロダクションも残れず辞めてしまって、どうするの?といろいろと想像して。このまま大学を卒業するのが一番いいに決まってるけど、その間の何年間を、声優を目指している身としてどうやって過ごそうかと思ったときに、一旦全部リセットしようって。大学もアルバイトも辞めて、とにかく全部を1回リセットしようと思って中退を選びました。
演劇の劇団に出演させてもらったり、声優の仕事でもフリーで参加させてもらったりとかしながら、ちょっとずつちょっとずつ、自分のこれまでできてこなかったこと、足りてなかったことを、大学を辞めてからはやってきました。全部リセットしたので、「ここからは意地でも夢を叶えないと駄目だな!」っていう勢いでやって、今があるなと思っています。
何としても、声優になりたい、声優として仕事をしたいという執念でしがみついてやっていました。その頃お世話になっていた劇団さんや、日藝の放送学部でラジオドラマ制作実習へ出演させていただいたり。当時はアクションの勉強もし始めた頃だったので、スーツアクターの仕事もさせてもらっていました。とにかくがむしゃらに、今手をつけられることはやっていこう、とやっていた頃だったので、不安もありましたけれども、ずっとくじけずに頑張ってきたところはありますね。
ありがとうございました。
次回も引き続き、中澤まさともさんにお話いただきます。
明日の勇気につながる1作中澤まさともさんのおススメ!
『妖怪大戦争』
(2005年/日本/監督:三池崇史/出演:神木隆之介、宮迫博之、近藤正臣、阿部サダヲ、岡村隆史、豊川悦司、栗山千明、菅原文太 ほか)
鳥取に越してきた都会の少年・タダシは、神社のお祭りで”世界を守る正義の味方「麒麟送子」”に選ばれた。日本全国の妖怪たちと力を合わせ、世界の破滅をたくらむ悪霊軍団の陰謀を阻止しようとする。
中澤:僕が特に印象に残ってるのが、水木しげるさんが「戦争はいかんよ」みたいなことを言って締めるところです。
映画は我々が生きている世界とはまた違う次元の世界であったり、物語があったりするんですけれども、こんなに我々が生きてる世界に地続きなファンタジー映画ってあるんだ!と当時思って。エンターテイメントとしてとても楽しませてもらった記憶がありますね。あの頃は、何も考えずに笑って見られる作品っていうのに、ちょっと救われていた気がします。
プロフィール
中澤 まさとも(なかざわ まさとも)
声優。練馬区出身で大学は日本大学芸術学部映画学科に進学。練馬区のアニメ制作会社スタジオ雲雀系のラルケが制作した『ギヴン』シリーズの他、TVアニメ『ブルーロック』や『黄昏アウトフォーカス』や、映画『フリクリ プログレ』などに出演。ゲームやドラマCD、舞台など幅広く活躍している。また、スーツアクターとして東映東京撮影所製作の『仮面ライダー』シリーズなどにも出演する経験を持つ。