「ねりま漫画サロン」が開催、規模を拡大し2会場で実施
練馬区にゆかりのある漫画文化を発信するイベント「ねりま漫画サロン」が、2025年12月6日・7日(大泉学園ゆめりあホール)と、13日・14日(練馬文化センター)の計4日間にわたって開催された。2023年の初開催から3回目を迎えた今回は、これまで会場だった大泉学園ゆめりあホールに加え、新たに練馬文化センターでも開催されることに。本イベントが地域に定着しつつある様子がうかがえた。内容としては、トークショー、座談会「ねりま漫画家ミーティング」、練馬区ゆかりの漫画家の原画展示、ワークショップ、似顔絵コーナーなどなど。原画展では漫画家本人による展示ガイドも行われた。数々のイベントが催され、今年も来場者の関心を集めていた。
トークショー「高橋よしひろ&石川サブロウ」(6日)

6日には大泉学園ゆめりあホールにて、
高橋よしひろ【1】(代表作:『銀牙-流れ星 銀-』など)と
石川サブロウ【2】(代表作:『北の土竜』など)によるトークショーが開催された。ともに大泉に住んでいたという両氏。練馬区にゆかりのある二人が、漫画家を志したきっかけや創作秘話を語り合った。
漫画家を志したきっかけ
中学卒業後に愛知県にあるトヨタの自動車工場で働き始めた高橋は、給料で漫画を買うようになり、そこで
本宮ひろ志の『男一匹ガキ大将』【3】と出会う。幼少期に
石川球太の『おおかみ王ロボ』【4】を読んだことも、漫画家を志すうえで重要な要素だったと述懐する。その1年半後に仕事を辞めて上京。当時の漫画雑誌には、ファンレターの宛先として漫画家の住所が記載されていたので、それを頼りにいきなり本宮のもとを訪ねてアシスタントを志願した。「今はアシスタントは埋まっているが、半年後にまた来てほしい」と伝えられ、半年後に原稿を持参した際笑顔でいたら先生に怒られてしまったが、先生のお兄さんがフォローしてくれて結果的に合格できた。そして本宮ひろ志のもとでアシスタントをしながらデビューを目指すようになったという。

石川も同様に行動派だ。高校中退後、デザイン会社に勤めていたが上司と喧嘩して退職。漫画家を目指そうと決意し、雑誌に載っていた連絡先に片っ端から電話をかけた。このとき永井豪の
ダイナミックプロ【5】から「遊びにおいで」と声をかけられ、持参した原稿で即採用となった。ただし諸事情から1週間で退職し、その後1年ほどパチンコ三昧の日々を送る。あるとき、「なんで東京に出てきたんだろう」とふと我に返り、一念発起して集英社に原稿を持ち込み、デビューへの道が開けたとの話だった。
二人の出会いは集英社の執筆室だった。石川は「少年ジャンプ編集部の下に新人作家が缶詰になる執筆室があった。
車田正美【6】(代表作:『リングにかけろ』など)、
村上もとか【7】(代表作:『六三四の剣』など)、
江口寿史【8】(代表作:『すすめ!!パイレーツ』など)らが集まっていた」と証言し、同世代の漫画家たちがしのぎを削りながら交流を深めていた様子がうかがえた。
代表作創作秘話

それぞれの代表作についての秘話も興味深い。
『銀牙-流れ星 銀-』【9】は連載初期に人気が低迷した時期があったと高橋は明かす。打ち切りの危機を打開したのは、意外なアイデアであった。「どうせ終わるならと思い、犬にセリフをしゃべらせたんですよ」。これが読者に受け入れられ、急激に人気が上昇したという。また、当初はヒグマの赤カブトが築いた牙城に犬たちが立ち向かうところで完結を迎える予定だったが、編集部から続行を要請され「重箱の隅をつつくような感じで(赤カブトとのバトルを)描いたらウケた」とのことであった。

石川の代表作
『北の土竜』【10】は、会社に勤めていた時に知り合った友人をモデルに主人公のキャラクターを創作したとの裏話を明かしていた。連載継続を編集部から要請された点は高橋と同様で、もともとは10巻で完結する予定が、編集部から「延ばしてほしい」と要請され、結果的に21巻まで続いたそうだ。「棺に薔薇を入れるシーンだけで4週続けて、読者アンケート(人気投票)で2位をとった回もあった。連載をしている当時は、もう自分でもよくわからない状態だった」と笑う。
漫画家として成功を実感した瞬間について、高橋は「『銀牙-流れ星 銀-』がアニメ化されたときに認められた気がした」と語る。石川は尊敬する
ちばてつや【11】から
『がばい―佐賀のがばいばあちゃん―(原作:島田洋七)』【12】を褒められたときを挙げた。『いいの描いているね』と言われて、仲間になれた気がした」。
時代の空気を感じさせる貴重な証言の数々に、会場は熱心に聞き入っていた。
座談会「ねりま漫画家ミーティング」

13日に練馬文化センターの集会室で開催された座談会「ねりま漫画家ミーティング」には、
わたべ淳【13】(代表作:『ホウキとオートバイ』など)、
高見まこ【14】(代表作:『いとしのエリー』など)、
立野真琴【15】(代表作:『ホス探へようこそ』など)の3人が登壇した。トークテーマは「私のアシスタント時代とデビュー」。わたべと高見は
手塚プロダクション【16】に同期として入社した当時のことを、立野は
美内すずえ【17】(代表作:『ガラスの仮面』など)のアシスタント時代の思い出話を披露した。
アシスタント時代の思い出

1978年に手塚プロダクションに入社したわたべは、もともとはデザインの専門学校を出たあとに、かつて存在していた月刊漫画誌「マンガ少年」(朝日ソノラマ)の編集部に原稿の持ち込みをしていたところ、手塚プロダクションがアシスタントを募集していることを教えてもらい、応募したら採用されたという。同期の高見は美大の短大に通っていたが、将来の仕事が具体的にイメージできず悩んでおり、友人から手塚プロダクションの募集情報が少年誌に掲載されていることを教えてもらい、持ち込み用に描いていた原稿を送って採用されたと振り返っていた。これに対し、立野のキャリアは少し異なる。中高時代から「花とゆめ」(白泉社)に投稿を続け、高校卒業時に担当編集者がつき、その編集者の紹介で美内すずえのアシスタントとして2年間働くことになった。
師匠との関係

師匠との関係については、わたべは「手塚(治虫)先生とお話する機会はほとんどなかった」と、大所帯で会社組織の手塚プロダクションならではの事情を説明した。わたべ、高見の両名にとって手塚治虫は「神様のような存在」であり、「手塚プロダクションに入れなかったら今の自分はない」と口を揃えて感謝を述べた。一方の立野は、美内のアシスタントは2年間の契約だったと明かし、2年契約終了を機に白泉社のアテナ新人大賞に応募し、そこからデビューまでの道が開けたと振り返る。また、立野は美内と交わした約束があると打ち明けていた。実は美内のもとから巣立つ際に「
『ガラスの仮面』【18】の最終回には手伝いに来てね」とお願いをされたという。「あれから40年、まだ連載は続いていますが、最終回はぜひお手伝いに行きたい」との立野の言葉に、会場は温かい笑いに包まれた。
それぞれが異なる師匠のもとで学び、異なる道を歩んできた3人の漫画家。アシスタント時代の苦労、そして今も続く師匠への感謝が感じられるトークイベントとなった。
原画展示+展示ガイド

大泉学園ゆめりあホールのゆめりあギャラリーおよび練馬文化センター内のギャラリーには、それぞれの開催日に漫画の原画展示コーナーが設けられた。原画の提供には練馬ゆかりの漫画家集団
「ぽけまん」【19】(代表:石川サブロウ)のメンバーが協力しており、ちばてつやや村上もとかをはじめとする総勢27名、合計49点もの原画・複製原画が展示された。すべての原画・複製原画が写真撮影およびSNSへのアップロードが許可されていたため、来場者たちは展示作品を鑑賞しながらもスマートフォンなどで写真撮影に勤しんでいた。なお、ギャラリー内には展示作品のコミックスの現物も手に取れるように展示されていたので、作品の連載時をリアルタイムで知る来場者からは当時を懐かしむ様子が見て取れた。

なお、ギャラリーではプロの漫画家による展示ガイドも行われた。6日には
本庄敬【20】(代表作:『蒼太の包丁 銀座・板前修業日記』など)、13日には
あおきてつお【21】(代表作:『緋が走る(原作:ジョー指月)』など)がガイドを担当し、原画の見どころや自身の漫画家としてのキャリアについての解説を行った。
6日は本庄敬が展示ガイドを務め、石川サブロウや
星野之宣【22】などの漫画家とのエピソードを交えながらガイドを進めた。本庄と同郷の漫画家・
さとう輝【23】(代表作:『江戸前の旬』)が飛び入り参加し、本庄の代わりに解説する場面も。終始笑いが絶えないガイドとなった。
ワークショップ

6日には大泉学園ゆめりあホール7階ギャラリー奥のスペースにて、13日には練馬文化センターの集会室でワークショップ「キャラクターを描いてみよう」が開催された。プロの漫画家が講師となって参加者(事前申込制)に漫画のキャラクターの描き方を教えるワークショップであり、参加者は配付された色紙に任意のキャラクターを描いていた。講師を務めたのは
下條よしあき【27】(代表作:『マイコン刑事(原作:鷹見吾郎)』など)、
近藤たかし【28】(代表作:『漫画版 論語と算盤(原作:渋沢栄一)』など)、
のむらしんぼ【29】(代表作:『つるピカハゲ丸』など)、高見まこの4名。いずれも前年から引き続いて講師を担当し、慣れた様子で参加者たちに画材の使い方やキャラクター風の絵の描き方をレクチャーしていた。参加者が画材に親しみ、楽しんで描くことに主眼が置かれており、その趣旨はのむらの「漫画は遊びだから」との説明にあらわれていた。親子での参加者たちは和気あいあいとした雰囲気で下絵からペン入れ、イラストマーカーを使った彩色までの一連の流れを体験していた。
似顔絵コーナー

7日と14日には、ワークショップと同じスペースで「似顔絵コーナー」が開催された。似顔絵イラストは、下條よしあき、のむらしんぼ、高見まこ、
鈴木みつはる【30】、あおきてつおの5名が担当。整理券を求めて朝から長蛇の列ができるほどの人気ぶり。漫画家との会話を楽しみながら、自身の似顔絵が徐々に仕上がっていく様子を見ることができ、参加者は皆、大満足の様子だった。
《終了》区ゆかりの漫画家によるトークショーや展示を行う「ねりま漫画サロン」を開催します!
練馬区には多くの漫画家が居住しており、これまで数々の名作が生み出されてきました。そして、それらを原作とした映像作品も多くの方々に愛されています。そこで今回、区の特色である漫画を活かしたイベントを開催します。
開催概要
【開催期間】
①令和7年12月6日(土)・7日(日)
②令和7年12月13日(土)・14日(日)
【時間】
10時から18時
【会場】
①大泉学園ゆめりあホールおよびギャラリー(練馬区東大泉1-29-1)
②練馬文化センター集会室およびギャラリー(練馬区練馬1-17-37)
【料金】
無料
原画展示

村上もとか先生をはじめ、区ゆかりの漫画家総勢27名の原画や複製原画を49点展示
原画展示ガイド

作品の解説、漫画や練馬にまつわる話、経験談等を交えた漫画家によるガイドを実施
【定員】
各回10名
【申込】
当日10時より整理券を配布
似顔絵コーナー

プロの漫画家がオリジナルのタッチで似顔絵を描いてプレゼント
【日時】
令和7年12月7日(日)・14日(日)10時~17時
【定員】
各日60名程度
【申込】
当日枠ごとに整理券を配布
・前半枠(10:15~13:30):10時配布開始
・後半枠(14:00~17:00):13時30分配布開始
【漫画家】
・下條よしあき先生
・のむらしんぼ先生
・高見まこ先生
・鈴木みつはる先生
・あおきてつお先生
トークショー
【日時】
令和7年12月6日(土)14時から15時
【ゲスト】
高橋よしひろ先生、石川サブロウ先生
【会場】
大泉学園ゆめりあホール(練馬区東大泉1-29-1)
【料金】
無料
【対象】
小学生以上
【申込期間】
令和7年12月4日(木)まで
【申込方法】
申込方法:申込方法等の詳細は、
練馬区ホームページをご確認ください。
高橋よしひろ先生 × 石川サブロウ先生

高橋よしひろ先生
昭和28年生まれ、秋田県出身。47年「下町弁慶」で漫画家デビュー。「銀牙-流れ星 銀-」で第32回小学館漫画賞を受賞。令和3年に横手市増田まんが美術館の2代目名誉館長に就任。かつて練馬区に在住。主な作品に「白い戦士ヤマト」、「銀牙-流れ星 銀-」、「銀牙伝説WEED」など。週刊漫画ゴラクにて「~銀牙伝説~レクイエム」連載中。

石川サブロウ先生
昭和28年生まれ、北海道出身。49年「立ち読み厳禁」で第7回手塚賞佳作を受賞、同作品で漫画家デビュー。長く練馬に在住し、多くの作品を生み出している。主な作品に「北の土竜」、「神様のカルテ」(原作:夏川草介)、「がばい-佐賀のがばいばあちゃん-」(原作:島田洋七)など。
公開座談会「ねりま漫画家ミーティング」
【日時】
令和7年12月13日(土) 14時から15時
【ゲスト】
わたべ淳先生、高見まこ先生、立野真琴先生
【会場】
練馬文化センター集会室(練馬区練馬1-17-37)
【料金】
無料
【対象】
小学生以上
【申込期間】
令和7年12月4日(木)まで
【申込方法】
申込方法:申込方法等の詳細は、
練馬区ホームページをご確認ください。
わたべ淳先生 × 高見まこ先生 × 立野真琴先生

わたべ淳先生
東京都出身。昭和55年「海へ…」で漫画家デビュー。数多くの作品を生み出し、漫画専門学校で講師を務めた経歴も持つ。主な作品に「横浜ラブ・コネクション」、「レモンエンジェル」、「風にヨロシク!」、「ライジング」など。

高見まこ先生
東京都出身。昭和55年「みどりのラブ・ステップ」で漫画家デビュー。58年~62年にかけて連載した「いとしのエリー」は映画化もされた。主な作品に「いとしのエリー」、「ふたりの気持ち」、「ボクの彼女」、「BABY BEAT」など。

立野真琴先生
富山県出身。61年「ゆられてたまごBoys」で漫画家デビュー。以降、練馬区に在住し、現在も複数の作品を執筆中。主な作品に「そりゃないぜBABY」、「カードの王様」、「ホス探へようこそ」、「YELLOW」など。
ワークショップ

【日時】
①令和7年12月6日(土)10時30分から12時
②令和7年12月6日(土)13時30分から15時
③令和7年12月13日(土)10時30分から12時
【会場】
①②:大泉学園ゆめりあギャラリー(練馬区東大泉1-29-1)
③:練馬文化センター集会室(練馬区練馬1-17-37)
【料金】
無料
【対象】
小学生以上
【申込期間】
令和7年12月4日(木)まで
【申込方法】
申込方法:申込方法等の詳細は、
練馬区ホームページをご確認ください。

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