—— 日藝【1】に通っていらっしゃいましたが、練馬区といえばどんな場所、どんなことが思い浮かびますか?
岡本:やはり大学ですね。ありがたいことにお仕事しながら通わせていただいたので、「あと10分で着けば間に合う!」と、走っていた思い出があります。 あとは、今はもうなくなってしまいましたが、江古田に「お志ど里」という定食屋さんがあって、ご飯を食べに行くと先生たちに会うことがありました。大学の中で私はいつもバタバタしていたので、唯一先生たちとゆっくり話せる場所でもありました。
—— 2003年に雑誌ニコラのモデルとして芸能界に入られました。お芝居の仕事は、モデル時代から目指されていたのでしょうか。
岡本:女優さんになりたいとニコラのオーディションを受けたわけではなかったのですが、ドラマや宝塚の演目をテレビで見ていて、興味はありました。小学校6年生のときにオーディションに受かって、その後演技レッスンを受けさせていただのですが、自分ができていないことを子供ながらに実感して、どんなに頑張っても上手くならないところから、お芝居にはまっていった気がします。
—— 一番最初のドラマレギュラー出演が『生徒諸君!』【2】でした。撮影現場の様子は覚えてらっしゃいますか?
岡本:学園ものの授業の撮影では、良い表情をしてる人がカメラに抜かれるんです。私はメインキャストではなかったので、どうやったらカメラに抜いてもらえるか、みたいなことを考えていました。やる気を見せるために朝一番にスタジオに入ったり、休憩時間もずっと現場にいたり。すると私のガッツが伝わったのか、1話分メインで出演させていただくことができました。芸能界は努力が全て実る世界じゃないと子供ながらに思っていましたが、見ている人は見てくれていると、大人の思いみたいなものを感じられた、良いスタートだった気がします。
—— 2008年に映画『憐 Ren』【3】で初主演を務められました。主演の看板を背負ったときの心境は、どのようなものでしたか?
岡本:当時はただひたすら必死でした。その記憶でいっぱいです。 映画の主演も初めてでしたし、SFのお話だったので、自分のことでいっぱいいっぱいだったなと思います。
—— 拝見しましたがすごく不思議な映画ですね。1カット長回しの焚き火のシーンが印象的でした。
岡本:一部の方からすごく熱狂的なお声をいただく作品です。監督は数年前に亡くなられましたが、その後たまたま奥様にお会いする機会があって、すごく熱いお話をさせていただきました。監督が亡くなる前に、「あのときは本当に小娘ですみませんでした」と謝りたかった、ちょっと悔しい想いもある映画です。
焚き火のシーンはすごく寒かったです。夕暮れ前ぐらいからリハを始めて、3、4回ぐらい撮ったと思いますし、それぞれの撮影前のリハも20分くらい掛かる中で、「焚き火が消えるぞ、消えるぞ」と思いながらの撮影だったり、みんな寒すぎてろれつが回らなくなってきたり、なにかそういうヒヤヒヤした空気みたいなものがフィルムに乗ってますよね。
—— 大学は日藝の映画学科演技コースに進学されました。これまで多くの作品に出演してきた中で、なぜ映画学科に進学しようと思ったのでしょうか?
岡本:高校1・2年生のときは大学進学をあまり考えていなかったのですが両親が「大学進学して欲しい」と正直に話してくれて、その想いは汲み取りたいと思いました。事務所の方にも「親御さんが進学を望んでいるのであれば、進学した方が良いのではないか」と声をかけていただいたんです。進学するのであれば、自分の好きなことを学べる場じゃないと両立できないと思って、いくつか学校をピックアップした中に、日藝がありました。撮影・録音コースの受験も考えたのですが、自分が俳優を続けていくことに対して、周囲や自分自身への覚悟を決めるということも考えて、演技を学ぶ場に行くことを選択して受験しました。
—— 大学で印象に残っている授業などはありますか?
岡本:やはり実習の授業ですね。 監督コース、撮影・録音コース、脚本コースのみんなで集まって、映像作品を作るのがすごく楽しかったです。3年生はフィルムで撮影するので、実際にフィルムを触ってみたり、フィルム交換するのを見たりするのも楽しかったです。 みんな映画好きで映画オタクで、その熱量の高さに尊敬する子たちばかりの中で勉強できたのはいい経験でした。
—— 学業とお仕事の両立は大変だったと思います。1~2年は所沢校舎ですよね?
岡本:そうです。 所沢校舎は航空公園駅や新所沢駅から遠かったので、ドラマ撮影しながらだと1限だけしか通えませんでした。 撮影が日中に終わったとしても、ギリギリ最後の授業に間に合うかどうかという状況だったので、よく校舎を走っていました。体育の授業は3回休むと単位が取れないので、「何とかその日だけはお願いします」と仕事の調整をお願いさせていただいたことも懐かしいですね。
—— 舞台と映像作品での演じ方について、それぞれ大事にしているポイントはありますか?
岡本:根本は変わらないと思うのですが、映像作品ではやはり瞬発力、「その場でどれだけフレッシュに感じるか」みたいなことが求められる要素が多いなと思っています。
演劇作品では、基礎体力や声の発声スキルなどを大事にしつつ、何回も何回も繰り返す中でどう毎回フレッシュに感じて積み上げていくのか、ということかなと思っています。
必要なスキルは似ていますが、準備の割合みたいなものが違う気がします。
私は今、演劇の仕事が多いのですが、やはり日常の体力みたいなものがより必要だなと思います。
—— 舞台だと、どれぐらいの稽古期間があるのでしょうか?
岡本:短くて1ヶ月、長くて2ヶ月ほどですね。作品や演出家さんによって違います。 初めの1週間は本読みと、テーブル稽古といって、作品の歴史背景をみんなで共有したり、翻訳された言葉の語尾を「こっちにした方がいいのではないか」と話し合ったりする、勉強の場みたいなものがあります。
映像だとそういうものがなく、それぞれが台本を読んで、自分なりに役を解釈して役づくりしていって、その場で相手とセッションするみたいな。「そっちがこう来るなら、こっちが準備してたこの感じだと無理だ。じゃあどうしよう?」という感じでやっていくので、本当に違う種目だなと思います。 面白いですよね。
—— こんな作品に関わりたい、こんな役を演じてみたいなど、ありましたら教えてください。
岡本:出会った瞬間のその作品、スタッフの方、監督、出演者の方を、最大限愛せたら一番だと思うので、出会いを大事にしていきたいなと思います。 私はありがたいことに、映像作品も演劇作品も同じぐらい演じさせていただく機会があるので、どちらも大好きですし、たくさんの映像、演劇が好きな方と一緒に歩めたら、なんて欲深いことを考えています。
—— ――そろそろ時間が迫ってまいりました。岡本さん、最後に一言ご挨拶をお願いします。
岡本:大学のことを思い出したりして、温かい話ができて嬉しかったです。ありがとうございました。
—— ありがとうございました。