—— 令和版『悪魔くん』【1】が地上波放送中ですが、今どのような思いをお持ちですか?
佐藤:そもそもNetflix配信オンリーということだったので、地上波放送は「できたらいいな」という淡い希望でしたが、それが実現したのは驚きですね。
最初の1話の放送の時には、スタッフがちょっと集まって、リアルタイム視聴しました。やはりみんな嬉しかったですよ。
Netflixに加入されている方もたくさん観てくださってますけども、さらにたくさんの人に見てもらえるというのがやはり嬉しいです。
—— SNSではトレンドにも入りましたが、視聴者の反応をどのようにご覧になりますか?
佐藤:見たかったけど見られなかった人たちが、かなりいらっしゃったんだなというのは思いました。 元々最初のシリーズ配信で作っているときには、海外の人も含めてたくさん見てほしいなと思っていましたが、それでもこんなにたくさん「見たいのにまだ見られてない」人がいたんだなというのを実感しましたね。
—— 佐藤監督は平成版『悪魔くん』【2】でもシリーズディレクターを務められていますが、その経緯はどんなものだったのでしょうか?
佐藤:この頃の僕は新人だったのですが、かわいがってくれていた東映動画【3】の籏野義文プロデューサー【4】が最初『悪魔くん』の企画を立ち上げていて、「佐藤、やんない?」と声を掛けてくれたんです。ただ籏野さんはちょっと体調を崩されて、企画段階のときに入院されたので、プロデューサーは代わったのですが、僕は監督として残ることになりました。
—— 世代的に、1966年の特撮ドラマ『悪魔くん』【5】はご覧になっていたのでしょうか?
佐藤:放送していたのは知っていましたが、僕は小さいときから怖いものがそんなに得意ではなかったので、見てはいなかったんです。ただ小学校5年か6年のときに、普通のお家のリビングで習うそろばん塾に通っていて、授業を受けている後ろでその家の子どもたちがご飯を食べながらテレビを見ていたんです。その時に『悪魔くん』が流れていて 「後ろで何か怖そうなもんやってる」と思いながら、そろばんに集中できなかった記憶がありますね。
—— 佐藤監督がシリーズディレクターを務めた平成版『悪魔くん』は、先行してコミックボンボンで連載が始まった水木しげる先生【6】の漫画【7】が並行原作のような感じですが、佐藤監督が参加されたタイミングではどこまで固まっていたのでしょうか?
佐藤:東映アニメーションはプロデューサーとテレビ局、スポンサーと、メインライターさんで大体形を決めて、企画が決まったところでディレクターが参加する形が多いんです。 なので僕が参加したときにはいろいろと固まっている状態でした。
—— 水木先生のコミックボンボン版と比べるとだいぶ違いますが、原作はあまり意識せずに進められていたのでしょうか?
佐藤:そうだと思います。水木先生はアニメーションに関して懐が広く、いろんなことを認めてくださると聞いてました。キャラクターを見ていただくと、漫画とアニメではデザインが変わっていたり、鳥乙女【8】は最初漫画にいなかったのですが、アニメに合わせて漫画にも登場したりとか。 水木先生の方でアニメに合わせていただくようなこともありました。
—— 平成版制作当時は水木先生と打ち合わせをしたようなことはあったのでしょうか?
佐藤:そのときはありませんでしたが、プロデューサーは何度か伺っていたようです。 アニメ版で出てくる東嶽大帝【9】というラスボスに関しては、横山プロデューサー【10】が、「水木先生のお宅の玄関の置物がすごくかっこ良かったので、それを使うことにした」みたいなことを仰ってました。僕はその話を聞いて置物の写真は見ましたけども、水木先生には打ち上げで一度お会いしたぐらいなんです。
—— 平成版『悪魔くん』の制作中に、特に印象的に覚えていらっしゃることはありますか?
佐藤:実は最初シリーズディレクターで入ったのですが、劇場版『悪魔くん』【11】の話もテレビのスタートとあまりタイムラグがなく始まっていたんです。当時の東映動画では、シリーズディレクターは13話まで作品の面倒を見たら、あとは各話演出に戻るのが一般的な考え方でしたので、途中から劇場版に行ったんですよ。なのでテレビに戻ったときに、劇場版の「スフィンクス」、「見えない学校が動き出す」というモチーフがテレビシリーズにもあるのを知らなくて、後で絵コンテを見て「これ、テレビでもやるの?」となりました。
—— そして30年以上の時を経て、令和版『悪魔くん』を作ることになりますが、どのようなきっかけだったのですか?
佐藤:イベントで『悪魔くん』の上映をしたときに、ファンの方たちが一緒に歌を歌ったりしてすごく盛り上がっているのを永富プロデューサー【12】が見て、「こんなにファンがいるのか!」と驚いて、「新たに作るとしたら、佐藤監督やってもらえますか?」と声を掛けられたんです。「やるんだったらやります」とお返事したのが最初のスタートですね。
—— 見どころはどんなところでしょう。
佐藤:配信のときは1話が終わると2話がすぐに見られるんです。でも放送だと、1話と2話の間に1週間待たなければいけない。これが本来の楽しみ方だな、と思いました。 1週ごとにちゃんと見ていくということも、エンターテインメントの一つのあり方なので、毎週末ちゃんと見ていただいてどういう反応が来るのか、それも楽しみなんです。
今回は、「最初は折り合っていない悪魔くんとメフィスト3世が、どのように心が繋がっていくのか」「一郎くんの心にどのぐらい人の心が芽生えていくのか」という物語なので、そこを軸に見ていただきたいですね。基本的にはバディが成長していく物語。6話ぐらいだと「あれ、ちょっと近づいたのかな?」みたいな感じだと思いますが、この先どうなっていくのか楽しみにしていただければと思います。
—— TOKYO MXでの放送直後から、1週間限定でその話数について監督とキャストの皆さんが語る、フターラジオというYouTubeの番組も配信中です。
佐藤:わちゃわちゃとしゃべってます。今回改めて聞いてますが、面白いですね。
ありがとうございました。次回も引き続き佐藤順一監督にお話いただきます。どうぞお楽しみに。
明日の勇気につながる1作佐藤順一監督のおススメ!
『カレイドスター』(TVアニメ全51話)
(2003~2004年/原案:佐藤順一/監督:佐藤順一、平池芳正(27話以降)/出演:広橋 涼、大原さやか、子安武人、西村ちなみ、折笠富美子、小桜エツ子、下野紘 ほか)
世界的に大人気のエンターテイメント「カレイドステージ」ショウに憧れる16歳の少女・苗木野そらは、オーディションを受けるため単身渡米。ステージの花形「カレイドスター」を目指して様々な試練を乗り越えていく。
佐藤:僕がやってきた作品の中で、「これを見て自分の道を決めました」という声がとても多い作品なんです。「『カレイドスター』を見てシルク・ドゥ・ソレイユに入りました!」という人もいらっしゃって、「いろんな人に元気を与えることができたんだな」と思います。当時はそこまで実感はなかったのですが、日にちが経って、年月が経って、改めて実感しています。
いろんなチャンネルで配信していますので、ぜひぜひご覧ください。
プロフィール
佐藤順一(さとう じゅんいち)
日本大学芸術学部映画学科在学中に東映動画の研修生試験を受けて合格し、大学を辞め東映動画(現在の東映アニメーション)に入社。1990年代に『美少女戦士セーラームーン』『夢のクレヨン王国』『おジャ魔女どれみ』といった児童・少女向け作品を中心に手掛け、数多くの名作を世に送り出す。2023年からNETFLIXで配信されている令和版の『悪魔くん』では総監督を務める。現在ではオリジナル作品の制作も積極的に行なっており、企画段階から精力的に関わった作品を発表している。