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ねりま映像人インタビュー

第43回 佐藤順一監督 前編

第43回 佐藤順一監督 前編

2026.02.20

こちらのコンテンツは、是非音声版でお楽しみください

練馬にゆかりの映像人の皆様にお話を伺い、練馬と映像文化の関わりを紹介する「ねりま映像人インタビュー」のダイジェストテキストです。
今回と次回のゲストは、アニメーション監督の佐藤順一さん。
佐藤順一さんは、練馬区江古田にある日本大学芸術学部映画学科在学中に東映動画の研修生試験を受けて合格。 大学を辞めて、東映動画、現在の東映アニメーションに入社されました。 『美少女戦士セーラームーン』『おジャ魔女どれみ』などの超人気シリーズでは、最初のシリーズディレクターを務められました。 1998年に東映アニメーションを退社され、現在はツインエンジンで活動中です。 総監督を務め、2023年からNetflixで配信されている令和版の『悪魔くん』が、本年1月9日より地上波初放送中です。 今回は、現在放送中の『悪魔くん』の話を中心に伺います。 よろしくお願いします。

—— 令和版『悪魔くん』【1】が地上波放送中ですが、今どのような思いをお持ちですか?

佐藤:そもそもNetflix配信オンリーということだったので、地上波放送は「できたらいいな」という淡い希望でしたが、それが実現したのは驚きですね。
最初の1話の放送の時には、スタッフがちょっと集まって、リアルタイム視聴しました。やはりみんな嬉しかったですよ。
Netflixに加入されている方もたくさん観てくださってますけども、さらにたくさんの人に見てもらえるというのがやはり嬉しいです。

—— SNSではトレンドにも入りましたが、視聴者の反応をどのようにご覧になりますか?

佐藤:見たかったけど見られなかった人たちが、かなりいらっしゃったんだなというのは思いました。 元々最初のシリーズ配信で作っているときには、海外の人も含めてたくさん見てほしいなと思っていましたが、それでもこんなにたくさん「見たいのにまだ見られてない」人がいたんだなというのを実感しましたね。

—— 佐藤監督は平成版『悪魔くん』【2】でもシリーズディレクターを務められていますが、その経緯はどんなものだったのでしょうか?

佐藤:この頃の僕は新人だったのですが、かわいがってくれていた東映動画【3】籏野義文プロデューサー【4】が最初『悪魔くん』の企画を立ち上げていて、「佐藤、やんない?」と声を掛けてくれたんです。ただ籏野さんはちょっと体調を崩されて、企画段階のときに入院されたので、プロデューサーは代わったのですが、僕は監督として残ることになりました。

—— 世代的に、1966年の特撮ドラマ『悪魔くん』【5】はご覧になっていたのでしょうか?

佐藤:放送していたのは知っていましたが、僕は小さいときから怖いものがそんなに得意ではなかったので、見てはいなかったんです。ただ小学校5年か6年のときに、普通のお家のリビングで習うそろばん塾に通っていて、授業を受けている後ろでその家の子どもたちがご飯を食べながらテレビを見ていたんです。その時に『悪魔くん』が流れていて 「後ろで何か怖そうなもんやってる」と思いながら、そろばんに集中できなかった記憶がありますね。

—— 佐藤監督がシリーズディレクターを務めた平成版『悪魔くん』は、先行してコミックボンボンで連載が始まった水木しげる先生【6】漫画【7】が並行原作のような感じですが、佐藤監督が参加されたタイミングではどこまで固まっていたのでしょうか?

佐藤:東映アニメーションはプロデューサーとテレビ局、スポンサーと、メインライターさんで大体形を決めて、企画が決まったところでディレクターが参加する形が多いんです。 なので僕が参加したときにはいろいろと固まっている状態でした。

—— 水木先生のコミックボンボン版と比べるとだいぶ違いますが、原作はあまり意識せずに進められていたのでしょうか?

佐藤:そうだと思います。水木先生はアニメーションに関して懐が広く、いろんなことを認めてくださると聞いてました。キャラクターを見ていただくと、漫画とアニメではデザインが変わっていたり、鳥乙女【8】は最初漫画にいなかったのですが、アニメに合わせて漫画にも登場したりとか。 水木先生の方でアニメに合わせていただくようなこともありました。

—— 平成版制作当時は水木先生と打ち合わせをしたようなことはあったのでしょうか?

佐藤:そのときはありませんでしたが、プロデューサーは何度か伺っていたようです。 アニメ版で出てくる東嶽大帝【9】というラスボスに関しては、横山プロデューサー【10】が、「水木先生のお宅の玄関の置物がすごくかっこ良かったので、それを使うことにした」みたいなことを仰ってました。僕はその話を聞いて置物の写真は見ましたけども、水木先生には打ち上げで一度お会いしたぐらいなんです。

—— 平成版『悪魔くん』の制作中に、特に印象的に覚えていらっしゃることはありますか?

佐藤:実は最初シリーズディレクターで入ったのですが、劇場版『悪魔くん』【11】の話もテレビのスタートとあまりタイムラグがなく始まっていたんです。当時の東映動画では、シリーズディレクターは13話まで作品の面倒を見たら、あとは各話演出に戻るのが一般的な考え方でしたので、途中から劇場版に行ったんですよ。なのでテレビに戻ったときに、劇場版の「スフィンクス」、「見えない学校が動き出す」というモチーフがテレビシリーズにもあるのを知らなくて、後で絵コンテを見て「これ、テレビでもやるの?」となりました。

—— そして30年以上の時を経て、令和版『悪魔くん』を作ることになりますが、どのようなきっかけだったのですか?

佐藤:イベントで『悪魔くん』の上映をしたときに、ファンの方たちが一緒に歌を歌ったりしてすごく盛り上がっているのを永富プロデューサー【12】が見て、「こんなにファンがいるのか!」と驚いて、「新たに作るとしたら、佐藤監督やってもらえますか?」と声を掛けられたんです。「やるんだったらやります」とお返事したのが最初のスタートですね。

—— 見どころはどんなところでしょう。

佐藤:配信のときは1話が終わると2話がすぐに見られるんです。でも放送だと、1話と2話の間に1週間待たなければいけない。これが本来の楽しみ方だな、と思いました。 1週ごとにちゃんと見ていくということも、エンターテインメントの一つのあり方なので、毎週末ちゃんと見ていただいてどういう反応が来るのか、それも楽しみなんです。
今回は、「最初は折り合っていない悪魔くんとメフィスト3世が、どのように心が繋がっていくのか」「一郎くんの心にどのぐらい人の心が芽生えていくのか」という物語なので、そこを軸に見ていただきたいですね。基本的にはバディが成長していく物語。6話ぐらいだと「あれ、ちょっと近づいたのかな?」みたいな感じだと思いますが、この先どうなっていくのか楽しみにしていただければと思います。

—— TOKYO MXでの放送直後から、1週間限定でその話数について監督とキャストの皆さんが語る、フターラジオというYouTubeの番組も配信中です。

佐藤:わちゃわちゃとしゃべってます。今回改めて聞いてますが、面白いですね。

ありがとうございました。次回も引き続き佐藤順一監督にお話いただきます。どうぞお楽しみに。

明日の勇気につながる1作佐藤順一監督のおススメ!

『カレイドスター』(TVアニメ全51話)
(2003~2004年/原案:佐藤順一/監督:佐藤順一、平池芳正(27話以降)/出演:広橋 涼、大原さやか、子安武人、西村ちなみ、折笠富美子、小桜エツ子、下野紘 ほか)
世界的に大人気のエンターテイメント「カレイドステージ」ショウに憧れる16歳の少女・苗木野そらは、オーディションを受けるため単身渡米。ステージの花形「カレイドスター」を目指して様々な試練を乗り越えていく。

佐藤:僕がやってきた作品の中で、「これを見て自分の道を決めました」という声がとても多い作品なんです。「『カレイドスター』を見てシルク・ドゥ・ソレイユに入りました!」という人もいらっしゃって、「いろんな人に元気を与えることができたんだな」と思います。当時はそこまで実感はなかったのですが、日にちが経って、年月が経って、改めて実感しています。
いろんなチャンネルで配信していますので、ぜひぜひご覧ください。
本テキストは音声版のダイジェストです。
是非音声版でお楽しみください。

プロフィール

佐藤順一(さとう じゅんいち)
日本大学芸術学部映画学科在学中に東映動画の研修生試験を受けて合格し、大学を辞め東映動画(現在の東映アニメーション)に入社。1990年代に『美少女戦士セーラームーン』『夢のクレヨン王国』『おジャ魔女どれみ』といった児童・少女向け作品を中心に手掛け、数多くの名作を世に送り出す。2023年からNETFLIXで配信されている令和版の『悪魔くん』では総監督を務める。現在ではオリジナル作品の制作も積極的に行なっており、企画段階から精力的に関わった作品を発表している。

ダイジェストテキストに登場する作品名・人物名等の解説

【1】令和版『悪魔くん』
水木しげる生誕100年記念作品として東映アニメーションが製作し、Netflixにて2023年より全12話が配信中のアニメ。
2026年1月より、TOKYO MXなどにて地上波でも放送中。原作は水木しげるによる同名漫画。二代目「悪魔くん」こと埋れ木一郎と、相棒・メフィスト3世が、不可思議な事件に挑む怪奇探偵バディストーリー。後述のTVシリーズ『悪魔くん』の続編にあたる。
原作:水木しげる/総監督:佐藤順一/シリーズディレクター:追崎史敏/脚本:大野木寛、金月龍之介、吉野弘幸/出演:梶裕貴、古川登志夫、三田ゆう子、ファイルーズあい、下野紘 ほか
【2】平成版『悪魔くん』
東映動画が製作し、1989年から1990年まで全42話が放送されたTVアニメ。原作は水木しげるによる同名漫画。1万年にひとりの救世主・悪魔くんが、「十二使徒」たちと共に悪魔軍団に立ち向かう。
原作:水木しげる/シリーズディレクター:佐藤順一/脚本:小山高男、菅良幸、岸間信明 ほか/出演:三田ゆう子、古川登志夫、深雪さなえ、永井一郎、田の中勇、西原久美子、丸山詠二 ほか
【3】東映動画
現在の東映アニメーションのこと。1956年に東映動画として練馬区東大泉に設立された、60年以上の歴史を持つアニメーション製作会社。1958年の日本初の長編カラーアニメ映画『白蛇伝』を皮切りに、数々の名作アニメを製作。1979年には映画『銀河鉄道999』が大ヒットし、爆発的なアニメブームを引き起こした作品のひとつとなる。コンピュータによるアニメ製作、自社コンテンツの海外販売などにも早くから取り組み、日本のアニメ産業のけん引役ともいえる存在となった。1998年には東映アニメーション株式会社と社名変更し、現在へと至っている。代表作には『ドラゴンボール』シリーズ、『セーラームーン』シリーズなど、誰もが知る超ヒット作が居並び、現在も『ONE PIECE』や『プリキュア』シリーズなど、世代を超える人気コンテンツを生み出し続けている。
【4】籏野義文(はたの よしふみ)さん
プロデューサー。1961年より東映動画で企画・プロデューサーとして多数の作品を手掛けた。代表作に、映画『アラビアンナイト・シンドバッドの冒険』(62)『サイボーグ009』(66)『空飛ぶゆうれい船』(69)、TVアニメ『狼少年ケン』(63-65)『デビルマン』(72-73)『聖闘士星矢』(86-89)『SLAM DUNK』(93-95)など。1995年2月逝去。
【5】特撮ドラマ『悪魔くん』
1966年から1967年に全26話が放送されたTVドラマ(モノクロ)。原作は水木しげるによる同名漫画。悪魔くんと呼ばれる少年・山田真吾が、自ら召喚したメフィストと共に、妖怪や怪獣と戦う姿を描く。
東映東京制作所による初の本格特撮TVドラマでもあり、「仮面ライダーシリーズ」や「スーパー戦隊シリーズ」の原点ともいえる作品。
原作:水木しげる/監督:小林恒夫、山田稔 ほか/脚本:高久進、伊上勝 ほか/出演:金子光伸、吉田義夫、潮健児 ほか
【6】水木しげる(みずき しげる)さん
漫画家、妖怪研究家。1958年に貸本漫画家としてデビュー。1965年に短編漫画『テレビくん』で講談社児童まんが賞を受賞すると、貸本時代に手掛けた作品も注目され、『悪魔くん』のTVドラマ化(66)や、『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ化(68)などの映像化が続く人気作家となった。フランス・アングレーム国際漫画祭最優秀作品賞や遺産賞、米アイズナー賞最優秀アジア作品賞を受賞するなど、国際的にも高く評価されている。幼少期を過ごした鳥取県境港市には、「水木しげるロード」と「水木しげる記念館」が作られている。2015年11月30日、93歳で逝去。
【7】漫画
1988年から1990年にかけて月刊コミックボンボン(講談社)にて連載された漫画『悪魔くん』のこと。「悪魔くん」こと埋れ木真吾が、メフィスト二世、十二使徒ら仲間と共に黒悪魔と戦う物語。
なお、『悪魔くん』の漫画には、貸本時代が初出で後に週刊少年ジャンプなどでも連載された主人公「松下一郎」版、週刊少年マガジンなどで連載された「山田真吾」版もある。
【8】鳥乙女
平成版『悪魔くん』に登場するキャラクター・鳥乙女ナスカのこと。鳥の羽が生えた美少女で、イースター島に伝わる鳥人伝説と、南米アンデスの鳥人伝説がモチーフ。漫画『悪魔くん』(コミックボンボン版)には第6話より登場する。
【9】東嶽大帝
平成版『悪魔くん』及び漫画『悪魔くん』(コミックボンボン版)の最終ボス。天上界、地獄界、妖精界、悪魔界、人間界の征服を目論み、9900万の黒悪魔を率いて、悪魔くんたちと戦う。
【10】横山和夫(よこやま かずお)さん
プロデューサー。東映動画では企画・プロデューサーとして、TVアニメ『夢戦士ウイングマン』(84-85)『銀牙 -流れ星 銀-』(86)『悪魔くん』(89-90)など多数の作品に参加。のちにKADOKAWAに移籍し、映画『ユンカース・カムヒア』(95)『はじまりの冒険者たち レジェンド・オブ・クリスタニア』(95)『X』(96)なども手掛けている。
【11】劇場版『悪魔くん』
1989年7月に東映まんがまつりの一編として上映された映画。上映時間は40分。スフィンクスを操り悪魔王国を作ろうと企むサタンに立ち向かう悪魔くんたちの姿を描く。
1990年3月の東映まんがまつりでは、『悪魔くん ようこそ悪魔ランドへ!!』(上映会25分)も上映された。
・劇場版『悪魔くん』
原作:水木しげる/監督:佐藤順一/脚本:菅良幸/出演:三田ゆう子、古川登志夫、深雪さなえ、土師孝也、屋良有作 ほか
・劇場版『悪魔くん ようこそ悪魔ランドへ!!』
原作:水木しげる/監督:佐藤順一/脚本:菅良幸/出演:三田ゆう子、古川登志夫、深雪さなえ、杉山佳寿子、川島千代子 ほか
【12】永富大地(ながとみ だいち)さん
東映アニメーション所属のプロデューサー。TVアニメ『ワールドトリガー』(14-16)『デジモンユニバース アプリモンスターズ』(16-17)『ゲゲゲの鬼太郎』(第6期/18-20)など、多数の作品に参加。東映ツークン研究所に出向した際には、デジタル技術を活かした企画として、TVドラマ『非公認戦隊アキバレンジャー』(12)、映画『009ノ1 THE END OF THE BEGINNING』(13)などもプロデュースしている。
『ゲゲゲの鬼太郎』(第6期)に参加したことをきっかけに、映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(23)では企画の立ち上げから参加。Netflix版『悪魔くん』でもプロデューサーを務めている。
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