【弘兼憲史×三田紀房】「ねりま漫画サロンinゆめりあホール」トークイベントの 様子を公開
漫画家になったきっかけや、名作の誕生秘話などについて語っていただきました。 他ではなかなか聞けない豪華トークをぜひご覧ください。
【レポート記事】~区ゆかりの漫画家によるトークを実施~
「ねりま漫画サロンinゆめりあホール」を開催
イベント全体概要
![展示風景](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-01.jpg)
8月3日(土)から8月9日(金)にかけて練馬区の大泉学園ゆめりあホールおよびギャラリーにて「ねりま漫画サロンinゆめりあホール」が開催された。初開催の前年は2日間の開催だったが、前年の好評を受け、今年から開催期間が延長されることに。イベント内容はトークショー、練馬区にゆかりある漫画家の原画の展示、ワークショップ、似顔絵コーナーと盛りだくさんで、夏休み中の親子連れをはじめ大勢の観客が訪れ、にぎわいを見せた。
トークイベント:弘兼憲史先生×三田紀房先生(3日)
![弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-04.jpg)
—— 漫画家として活動することになったきっかけを教えてください。
弘兼:子どもの頃からずっと漫画を描いていましたが、漫画家という職業は、なりたいからといってなれるものではありません。弁護士や医者は勉強をして資格を取ればなれますが、雑誌に掲載されている漫画の数と志望者を考えれば、とてつもない倍率です。中学生の頃には漫画家になることはもう諦めていました。ただ、早稲田大学に進学後も絵を描くことは好きだったので、この技術を活かせたらいいなと思い、企業の宣伝部を志望するようになりました。そうして松下電器(現在のパナソニック)に入社して宣伝の仕事をやっていました。結局、松下電器には3年いたんですけど、外部のデザイナーさんたちに指示を出すよりも、自分は現場で描くほうが向いていると感じるようになり、漫画を描こうと思って会社を辞めました。それまでコマを割って漫画を描いたこともなかったのに、かなり無謀な選択でしたね。それでも「ビッグコミック」(小学館)の賞に4回応募し、そのうち3回入選しました。3回目の入選時は、同期にわたせせいぞう【1】(代表作『ハートカクテル』など)さんや、谷口ジロー【2】(代表作『孤独のグルメ(原作:久住昌之)』など)さんなどがいたので印象深く覚えています。そうして27歳のときに漫画家としてデビューしました。
![三田紀房先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-05.jpg)
三田:僕は大学卒業後に西武百貨店に新卒で就職し、西武池袋本店の紳士服売り場で働いていたところ、父が病に倒れたので、岩手に帰郷して実家の洋品店を継ぐことになりました。ただ、地方の商店街の路面店というのは、みるみるうちに業績が落ちていった時代です。商売が苦しかったので、ちょっと逃げ込む先が欲しかったんですよね。それで漫画を描き始めました。もともとは僕の親族が村上もとか先生と御縁があり、村上先生が『六三四の剣』【3】を始めるにあたって「誰か剣道に詳しい人はいないか」と探していたときに、ちょうど学生時代に剣道に打ち込んでいる僕が紹介され、それを機にプライベートでもお付き合いするようになっていたんです。お仕事場も拝見させてもらっていたので、家業をやりながらでも漫画なら描けるかな、と思ったんですよ。そうして漫画を描くようになり、岩手でお店をやりながら月刊連載をやるという無茶なことをやりました。昼間、お客さんが来たら接客して、お客さんが帰ると、カウンターの下から原稿を出してレジの横で連載漫画を描いていました。
弘兼:こういう動機で漫画家になる人は珍しいですよ。だいたいみんな漫画一筋ですからね。もっとも、僕も賞金目当てのところはあったから動機は不純なんですけどね(笑)。
![三田紀房先生、弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-06.jpg)
—— 練馬区で活動されるようになった理由を教えてください。
三田:「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の編集者に「短期集中連載をお願いしたいんですけど、東京に出てきませんか」と誘われたんです。そのときに村上先生に相談したら、魚戸おさむ先生【4】が住んでいた石神井のアパートが空くから、そこに入居したらどうかと提案されたんですよ。妻も賛同してくれたので、借りた2トントラックに家財道具を積んで上京しました。だから練馬区に住むようになったのは、村上先生のおかげですね。
弘兼:僕は松下電器時代は大阪でしたが、会社を辞めたあとは、板橋区の成増に住んでいました。おじが成増で耳鼻科の医院をやっていて、部屋が余っていたんですよ。そこにはお茶の水女子大の漫研の部長だった柴門ふみ【5】(代表作『東京ラブストーリー』など)が手伝いに来てくれていましたよ。そのあと柴門ふみとは結婚するわけですが、石神井に移ったのは妻の勧めです。つまり、妻の言いなりになって練馬区に来たという感じです(笑)。
![弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-07.jpg)
—— おふたりには漫画家になる前に社会人経験があるという共通点があります。その経験は、漫画家としてどのように活きていますか。
弘兼:僕は松下電器の販売情報部でポスターやカタログ、チラシなどを作ったり、ショールームを運営したりしていました。それをそのまま漫画にしたのが『島耕作』シリーズ【6】ですから、あの3年間があったおかげで、40年間も連載を続けているわけですね(笑)。
三田:僕はあまり締め切りを遅れたことがないんですけど、それは「ちゃんと納品しなくちゃ」という気持ちになるからなんです。「お取引先様に迷惑かけちゃいけない!」みたいな(笑)。社会人経験があったおかげでビジネス感覚が養われ、事業として漫画を考えられるようになりました。
![弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-08.jpg)
—— おふたりにとって思い出の作品をお教えください。
弘兼:「週刊ヤングマガジン」(講談社)の創刊から連載した『ハロー張りネズミ』【7】ですね。これは探偵ものなんですけども、自由な発想で描かせていただきました。ネタに詰まったときには番外編で宇宙編とか時代劇編とか、妖怪や生霊が出てきたりと、いろいろな話をやりました。SF漫画が好きだったから、そういう要素を織り込みながら描いたので、なかなか仕事のやりがいがありました。10年間やったけど、結構面白い仕事だったと思いますね。
![三田紀房先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-09.jpg)
三田:『クロカン』【8】を「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)に連載している最中、初代担当が増刊号の編集長になり、原作付きの料理漫画の作画を依頼されました。隔週連載だったし、その担当に恩もあったので引き受けたのですが、正直に言えば、その料理漫画にはまったく力が入ってなかったんですよ。それは自分でも感じていました。すると、村上先生から「あの料理漫画からはどう考えてもやる気が感じられない。今すぐやめろ」と言われたんです。「君が言い出せないなら俺が言ってやる」と。そんな強い言い方をする方ではなかったので、びっくりして「わかりました」と即答し、次の日に編集部に電話して連載を辞めさせてもらいました。もしあのとき両方連載を続けていたら、どっちもダメになったと思います。結果的に『クロカン』に集中でき、それが評価されて「週刊ヤングマガジン」から「うちでも描きませんか」と誘っていただけたので、あのとき料理漫画を辞めたのが、自分にとってのターニングポイントになりました。
![会場風景](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-10.jpg)
—— 最後に会場の皆様にごあいさつをお願いします。
弘兼:僕はいつも同世代に向けて漫画を描いているので、大人の方にぜひ読んでいただきたいですね。そして日本の漫画は、ある意味では世界一と言えますから、今後も日本の漫画文化を世界に発信していきたいと思っています。
三田:練馬区には本当にたくさんの漫画家が住んでいて、漫画の聖地と言えます。この練馬の漫画文化を世界に発信し、練馬区のために何かお役に立てればと思っております。
![展示ガイド](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-12.jpg)
また、原画展では展示ガイドも実施され、漫画家が参加者とともにギャラリーをめぐりながら、展示された作品の前で解説を行った。このイベントは、本年からの新しい試みである。ガイドを担当した漫画家は、3日(土)は魚戸おさむ(代表作『家栽の人』(原作:毛利甚八)など)、4日(日)は
あおきてつお【17】(代表作『緋が走る』(原作:ジョー指月)など)、5日(月)は
のむらしんぼ【18】(代表作『つるピカハゲ丸』など)、8日(木)は村上もとかの4名。
![展示ガイド](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-14.jpg)
8日(木)村上もとかのガイドトークでは、トークイベントに登壇した弘兼憲史、三田紀房の両氏にまつわるエピソードをはじめ、自身と親交のある漫画家との話などを紹介。
竜崎遼児【22】の作品では、力を入れすぎてペンが折れたときに、飛び散ったインクを修正しないでそのまま原稿に使ったという逸話を披露した。
参加者から「どういう風に作風を身に着けつけていくのでしょうか?」と質問されると、「自分の好きな漫画を真似して描いてみる。あるいは掲載誌によっては、その作者の絵を追いかけたり。そうすると、これは違う、じゃあ他のものを取り入れて、ということをやっていって、自分のなかで探り探り描きました。いろいろな影響を受けながら描いていくと、だんだんと自分のものになっていくんです。」と秘訣を語った。
ワークショップ
![ワークショップ](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-15.jpg)
8月3日(土)にゆめりあホール7階ギャラリー奥にて「漫画家と一緒にキャラクターを描いてみよう!」と題して開催されたワークショップでは、講師の漫画家が参加者(事前申込制)に漫画風のキャラクターの描き方をレクチャーした。当日は3部制で、講師を務めたのは
下條よしあき【23】(代表作『マイコン刑事』(原作:鷹見吾郎)など)、
近藤たかし【24】(代表作『漫画版 論語と算盤』(原作:渋沢栄一)など)、のむらしんぼ、
高見まこ【25】(代表作『いとしのエリー』など)の4名。参加者は配付された色紙に思い思いのキャラクターを描き、サインペンでペン入れをし、イラストマーカーを使って彩色するまでの一連の流れを体験した。
似顔絵
![似顔絵](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240912a/img-16.jpg)
ワークショップと同じスペースでは、8月4日(日)に「似顔絵コーナー」が開催された。似顔絵イラストは、下條よしあき、のむらしんぼ、高見まこ、
鈴木みつはる【26】(涼原ミハル名義で『コミック版『逆説の日本史』中世鳴動編』(原作・脚本:井沢元彦)連載中)の4名が担当。参加者ひとりずつと会話をしながら、本人の特徴を捉えた漫画風のイラストを次々と仕上げていき、参加者たちは大満足の様子だった。
【告知記事】《終了》区ゆかりの漫画家によるトークイベントや原画展示を行う「ねりま漫画サロンinゆめりあホール」を開催します!
練馬区には多くの漫画家が居住しており、これまで数々の名作が生み出されてきました。そして、それらを原作とした映像作品も多くの方々に愛されています。そこで今回、区の特色である漫画を活かしたイベントを開催します。
開催概要
【開催期間】
令和6年8月3日(土)~8月9日(金)
【時間】
10時から18時
【会場】
大泉学園ゆめりあホールおよびギャラリー(練馬区東大泉1-29-1)
【費用】
無料
原画展示
![ゲスト:弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240621a/img-04.jpg)
村上もとか先生をはじめ、区ゆかりの漫画家総勢29名の原画や複製原画を約60点展示
原画展示ガイド
作品の解説、漫画や練馬にまつわる話、経験談等を交えた漫画家によるガイドを実施
【定員】
各回10名
【申込】
当日10時より整理券を配布
似顔絵コーナー
![ゲスト:弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240621a/img-05.jpg)
プロの漫画家がオリジナルのタッチで似顔絵を描いてプレゼント
【日時】
8月4日(日)10時~17時(最終受付16時30分)
【定員】
60名程度
【申込】
当日10時より整理券を配布
【漫画家】
・下條よしあき
・のむらしんぼ
・高見まこ
・鈴木みつはる
トークイベント
※申込受付は終了しました。
【日時】
8月3日(土) 14時から15時
(ゲスト:弘兼憲史先生、三田紀房先生)
【会場】
大泉学園ゆめりあホール(練馬区東大泉1-29-1)
【料金】
無料
【対象】
区内在住・在勤(在学)の小学生以上(申込者、同伴者共に)
【申込期間】
6月21日(金)から7月1日(月)まで
【申込方法】
申込方法:申込方法等の詳細は、
練馬区ホームページをご確認ください。
弘兼憲史先生 × 三田紀房先生
![ゲスト:弘兼憲史先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240621a/img-01.jpg)
ゲスト:
弘兼憲史先生
昭和22年生まれ、山口県出身。早稲田大学卒業。松下電器産業に勤務の後、49年漫画家デビュー。『課長 島耕作』 で第15回講談社漫画賞を受賞。練馬区で活動し、作中にもたびたび練馬を思わせる風景が登場する。
〈主な作品〉
『ハロー張りネズミ』 『加治隆介の議』 など。モーニングにて『社外取締役 島耕作』、ビッグコミックオリジナルにて『黄昏流星群』連載中。
![ゲスト:三田紀房先生](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240621a/img-02.jpg)
ゲスト:
三田紀房先生
昭和33年生まれ、岩手県出身。明治大学卒業。百貨店勤務、家業の跡継ぎを経て、30歳で漫画家デビュー。『ドラゴン桜』で第29回講談社漫画賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。かつて石神井町や大泉学園町に在住。
〈主な作品〉
『インベスターZ』『アルキメデスの大戦』『クロカン』など。グランドジャンプにて『Dr.Eggs ドクターエッグス』を連載中。
ワークショップ
※申込受付は終了しました。
![ワークショップ風景](https://nerima-eizobunka.com/wp-content/themes/nerima-eizobunka/images/under/event/240621a/img-03.jpg)
【日時】
①8月3日(土)10時30分から12時
②8月3日(土)13時から14時30分
③8月3日(土)15時30分から17時
【会場】
大泉学園ゆめりあギャラリー(練馬区東大泉1-29-1)
【料金】
無料
【対象】
区内在住・在勤(在学)の小学生以上(申込者、同伴者共に)
【申込期間】
6月21日(金)から7月1日(月)まで
【申込方法】
申込方法:申込方法等の詳細は、
練馬区ホームページをご確認ください。